① 西麻布の交差点近くに位置する「Cheese Steak TOKYO」外観
今、西麻布で在邦外国人の間で人気の店舗がある。チーズステーキサンドイッチ専門店の「Cheese Steak TOKYO」だ。この11月にオープンした同店は本場フィラデルフィアでチーズステーキサンド(以下、チーズステーキ)に魅せられたシェフの橋本晋一氏が長年、チーズステーキを提供するフードトラックで培ったノウハウをもとに起ち上げた。日本におけるチーズステーキの定着が難しい現状を鑑み、同店オープンに際しては古き良きアメリカのチーズステーキの魅力はそのままに、アメリカンスタイルを再現するのではなく、日本人にも受け入れられる味わいや形を追求した。その味わいは冒頭でも記したように在邦の外国人、それも主に欧米系のひとびとに広く受け入れられ、口コミが口コミを呼び、そこからリピーターが多く誕生しているという。現在、日本人との比率は半々というから西麻布という地の利を考えた上でも、橋本氏の作るチーズステーキが郷愁の味を求める彼らの心をいかに魅了したかは予想に易い。
ちなみにこの時期に実店舗の形で同店をオープンした理由について伺うと、「まずは今まで同様に、チーズステーキの魅力を日本にもっと浸透させたいという気持ちがありました。その中でコロナという生活スタイルの変化を迎え、チーズステーキが特別感と手軽さの両方兼ね備えた中食として時代のニーズに適ったものであるという、テイクアウト食品としてのポテンシャルを今まで以上に強く感じた次第です。実は今までチーズステーキが日本で根付かなかった理由のひとつに、形状からくる食べにくさがありました。現地ではそれも含めてチーズステーキの楽しみ方なのですが日本人にとってはそこがネックとなって選択肢から外されることも多かったんです。しかしご自宅やオフィスなど“個の空間”で食べていただける中食においてはその点はあまり気になられないようです。またチーズステーキというジャンルから、外国人コミュニティの多い西麻布で挑戦してみたいという気持ちもありました。その上で多様なシーンで楽しんでいただきたいということからイートインでの提供もしたく、そんな折にこの物件と縁があったことでオープンの運びとなりました。おかげさまで予想以上に外国人のお客さまから受け入れていただけて支えとなっていますし、日本人のお客さまにも多くご利用いただいているのでさらに認知を広げていければと思っています。現状はチーズステーキ、バインミー、ベジタブルサンドの3種で展開していますが、圧倒的にチーズステーキの人気が高いので今後はチーズの種類を変えてみたり、フレンチディップなどさらにチーズステーキを楽しんでいただけるメニュー展開も増やしていきたいと考えています」。
橋本氏が語るように、コロナによる外食への意識や価値観の変化は、テイクアウト市場での可能性が高い商材を持つ飲食店ほど勝ち残る時代を生んだ。また同店のように特化型のメニューで勝負する店舗への嗜好やニーズも高まっている。「Cheese Steak TOKYO」の挑戦が日本におけるチーズステーキ市場のジレンマにどう一矢を報いるのか? 今後も注目していきたい。
「Cheese Steak TOKYO」
https://cheesesteak-tokyo.business.site/
担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp