クルーズ事業において海外マーケットは考えていかなければならない大きな課題
----ところでフェリーとホテル、それぞれのビジネスはどのようなシナジーを生み出していますか。
フェリー事業を経て、オーセントホテル小樽と同じ 1998年から客船「ぱしふぃっくびいなす」を使ったクルーズ船事業を本格的に始めました。クルーズマーケットはハイエンドな客層が中心ですから、スモールラグジュアリーホテルとの共通性があると感じています。
クルーズ船に関しては海外マーケットについて私たちはまだ手付かずの状態で、今のところオペレーションレベルでは日本の方々を中心にやっています。具体的な取り組みには着手できていませんが、やはり早晩海外マーケットも考えていく必要があるでしょう。
クルーズ船のマーケットの課題として、価格設定の問題があります。私たち日本の企業は1泊5万円から6万円でクルーズを提供しているのですが、大型のアメリカ資本が日本に参入してきて 1泊 1万数千円、オプションを付けていったとしても 2万円程度の価格でマスマーケットの開拓を始めています。
一方、最近では、外国船社が定員300人から 400人ほどのコンパクトな船で展開する形も見られるようになりました。お客さまのかなりの部分がインバウンドで占められていますので、そういった海外マーケットの取り込みもやり方次第では上手くいくのではないかと見ています。
----たとえば著名な料理人も乗船して、クルーズするエリアの食材を使った料理を振る舞うといったような船内イベントも必要でしょうか。
リピーターが増えてくるとエンターテイメントのめずらしさだけでは惹きつけられなくなりますし、寄港地はどうしても限られますから、船内でユニークな催事を展開する必要に迫られていきます。
私たちもゲストシェフを呼ぶなどの催事企画も実施していますが、今後はさらにインバウンドのお客さまをターゲットにした企画も打ち出していかなければならないと思っています。
----新型コロナウイルスの影響でマーケットの流れも変わってしまったと思いますが、今後の事業展開としてどのようなことを構想していますか。
少なくとも言えることは、長い目で見ればコロナ禍は一過性の出来事です。コロナによってすべてが駄目になってしまうという話ではなく、ある程度は時間が解決する問題なのだろうと私は考えています。
コロナによるマーケットの変化よりも、むしろ以前からからあった旅行の形態そのものが変わってきていることに今後も注目しながら、どのように動くべきなのかを決めていかなければならないのだと思います。昔ながらの大型の団体ツアーはどんどんなくなっていますし、その代わり旅行の個人化、少人数化が進んでいきました。さらに、旅行の目的の多様化も目立つようになっています。こうした変化の中でいかに特徴をもって主張していけるかが、私たちのビジネスの大きなポイントになると思います。
マーケットに対して、私は楽観的に見ています。現になんだかんだで経済成長は続いています。上昇のスピードが早いか遅いか、程度の問題はもちろんありますが、今後も着実に豊かになっていくことは間違いないはずです。
ただ、コロナ禍によって「不要不急」に分類されるトップの消費として「旅行」が挙げられてしまっているという、目先の困りごとはもちろんあります。特に客層や年齢層を考えると、私たちがメインターゲットとしているのは一定以上の年齢の富裕層の方々であり、量より質で勝負していかなければなりません。時代の変化に合わせながら、そういった層に刺さるコンセプトを考えていくことが、将来にわたって重要なポイントで在り続けるでしょう。