今回の移転に当たり、ブランドカラーを従来のえんじ色に「地域密着・原点回帰」をテーマにした松陰神社前店のメインカラーである藍色を織り交ぜたふじ色へと変更した
老舗煎餅店の「銀座 松﨑煎餅」が今夏、本店及び本社機能を銀座5丁目から4丁目へと移転させた。その理由について社長の松﨑宗平氏に伺ってみたところ、面白い答えが返ってきた。
「今回移転を決意した背景には、コロナ禍で以前本店を置いていた店舗で使用できるフロアが限定され(※地階の利用がコロナでできない時期が長かった)、商品の陳列以外の“表現”ができないジレンマがありました。また家賃の問題などを含め、コロナによる影響から事業内容を見なおす必要もありました。それであれば住所は同じ銀座ですが、“東銀座”“木挽町”と呼ばれるエリアで、自分が表現したいこと、コミュニティを作ることができる新たな『松﨑商店』を作ろうと思った次第です。ですから私自身もそうですが、東銀座を足場に新たな挑戦をしたいと思っている人たちが相談に来てくれたり、互いに交流を持つ場となるような“サードプレイス”としての機能もこの店が持てたらいいなと考えています。今回あえて屋号に“銀座”は入れず『MATSUZAKI SHOTEN』としたこともそんな思いの表れです」。
店舗エントランスに備え付けられたネオンカラーの店舗サイン。“温かみがあって人が集う”というイメージから今回の店舗ではネオンもひとつのテーマとなっている
松﨑氏が示すところの“表現”とは何なのだろうか?
「以前の私は“年配の方がたにも認められる店”を作ることを念頭に店舗経営をしていた部分がありました。しかし一口に年配といっても、遊び心があったり、自由な感性を持った先輩たちもたくさんいらっしゃる。それであれば自分が楽しいと思えること、それを理解してくれる人とつながれる場としての店舗づくりをしてもいいのではないかと。そしてそういったフィールドにいる人を呼び込める店を作りたいと思うようになりました。そういった意味で新しい店舗では現在は商売の軸である煎餅も『MATSUZAKI SHOTEN』の1ブランドという立ち位置で展開していこうと考えていて、今後、新たな挑戦としてさまざまな業態を手掛けていきたいと考えています。そういった“面白い”“楽しい”を発信したり、ポップアップできることでいろんな可能性が生まれると思いますし、新たな展開も生まれるのではないかと期待しています」。
既に具体的なプランなどはあるのだろうか?
「まずカフェにおいては『ぎんざ空也 空いろ』とコラボした“松崎ろうる with ぎんざ空也 空いろ”や『空いろ』自身の商品も販売しています。また音楽と煎餅を楽しむイベントなどもやっていきたいと考えており、現在キャッシュレスでイベントに参加してもらえるアプリも開発中です。また将来的にはアパレルとかも手掛けたいですね。『MATSUZAKI SHOTEN』ではこんな風にいろいろな可能性に挑戦したいと思っていますので、面白い企画があればぜひお声がけいただきたいですし、人が集まることで偶発的に生まれる“何か”にも期待をしています」。
200年を超える老舗の継承者が“風の時代”に挑む“新たな老舗の在り方”。今後どのように展開し、化学反応を見せていくのか、とても楽しみだ。
MATSUZAKI SHOTEN
matsuzaki-shoten.tokyo
担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp