IT技術でオペレーションの無駄を省き顧客のニーズに合わせてサービスを提供
---オペレーションも IT化を図るようですが、サービスに関して IT化に懐疑的なホテル関係者が少なくないように思います。それに関してのご意見をお聞かせください。
私たちは、接客サービスをすべてデジタルで行なうとは考えていません。ただ無駄な部分はたくさんあると思っています。例えばフロントに入る宿泊客の問い合わせは、9割以上が同じものだと言われていますので、これは AIで対応できるのではないでしょうか。そうすればお客さまをお待たせすることもありませんし、ホテル側も365日24時間人員を配置する必要もなくなります。こうした効率化できるところを、全部自動化することがわれわれの戦略の一つです。
また、ホテル内では現金を使わないように設計しています。客室のミニバーも、RFIDをつけて冷蔵庫から取ったら自動的に決済されるので、オペレーションの手間が一つ減ります。いままでの常識を一つずつ見直すことでユーザー体験も上がり、よりよいサービスにつながるのではないでしょうか。
こうした取り組みはコストカットのために行なうのではなく、スタッフが空いた時間をすべてお客さまに振り向けることが狙いです。つまり、より手厚いホスピタリティーを提供するために、AIでできることは AIを使うという方針です。そのために、世界から見ても誇れる日本のホスピタリティーを実践していた【リトリート青凪】の支配人だった吉成氏を、系列会社にあたる【NOT A HOTELマネジメント】にお呼びしたのもその一環です。
---ある方向から見ると“おもてなし”になるものが、別の方向から見ると無駄に見えることが結構あると思います。私もおもてなし至上主義が本当に受け入れられているのか、疑問に思うときもありますね。
おもてなしとは「よい言葉でもあり、都合のよい言葉」でもあると思っています。
手間をかけるという美学をおもてなしと考えがちですが、かまって欲しい方もいれば、放っておいて欲しい方もいます。
実は、おもてなしをオプションにし、デジタルでカスタマイズするソフトウエアも開発したいと考えています。おもてなしを「あり」「なし」にして中間を作らない。ホテルサービスが必要な方にはバトラーをつけて部屋での料理のサービスや、ちょっとしたお使いなども受け持ちます。求められるかもしれないという状態が、最もコストを上げる要因になりますから、サービスは有料という提案をすることでホテル業界全体のサービスのレベルをあげる一助になると考えています。
---AIと人によるホスピタリティーを融合したソフトを商品として販売するお考えもあるのでしょうか?
ソフトウエアだけを販売していく考えはありません。ただブランドとセットでフランチャイズとして販売することは考えており、福岡はその最初の案件です。事業主には NOT A HOTEL福岡というブランドとオペレーションとソフトウエアをパッケージで提供しています。今後はこうした FC案件も増やしていく方針です。
---FCの対象はどのように想定されていますか?
一つは不動産開発を行なっているデベロッパーです。もう一つは同業者の宿泊業を営む皆さまで、空いている部屋や敷地内で未開発の場所などを私たちにご提供いただき、パースを公開して売れたら新しいヴィラを建てて運営をお願いするという事業スキームです。現在、コロナ禍で借り入れが増え、ホテルの売却を迫られているという話をよく聞きますが、すべての敷地ではなく一部の敷地をオーナーさんに販売し、アセットを軽くするという考え方もあると思っています。実質投資ゼロでホテルの客室を増やせるのは、おもしろいモデルかと思います。
---フィナンシャルも含めてバックアップをするという形ですね。
そうですね。こういったモデルをすべてパッケージにしてご提案していくことを、ビジネスの中心にしていこうと考えています。同業者の方々のライバルとしての NOT A HOTELではなく、提携パートナーとして今後ご一緒できればと考えています。
---最後に今後のビジョンをお聞かせください。
国内には観光地ではなくても素晴らしい場所はまだまだたくさんあります。こうした超一等地ではない場所でも、集客ができることを証明していきたいと思っています。現在、30ほどの開発見込み案件が来ていますので、パートナーさまと共に推進していければと考えています。
---さらにこのビジネスモデルが発展してくことを期待しております。本日はありがとうございました。
NOT A HOTELが独自開発した、ホテル販売のアプリケーション。スマホでもアクセス出来、物件もカード決済で購入申し込みをすることができる。また、オーナーが使用しない場合は、空室としてホテル販売をすることもアプリ内で行なえる