銀行融資だけに頼らない資金調達でこれまでにないホテルを創造
---NOT A HOTELの具体的な販売方法についてもう少し詳しく教えてください。
まずオーナーを集めるところから始めます。そこで集めた資金が建築、運用に見合う額に達したら建設に着手します。 販売サイトには物件のパースが並んでいて、例えば価格や利回りのシミュレートなどが掲載されており、「いますぐ購入する」というボタンをクリックすればカード決済で申し込みを可能にする予定です。また、オーナーが使わないときは、ボタンを押すだけでホテルとして貸し出せるというアプリサービスも行ないます。ホテルとして利用する方は、NOT A HOTELサイトからのみ予約が可能なので、既存OTAを使うことはありません。こうしてすべてをデジタルで完結させ、自社で行なうのが方針であり特徴となっています。
現在は栃木県の那須、宮崎県の青島の二拠点について今夏に販売を開始し、来年 6月に開業予定です。先日ローンチしましたが、今年度末には福岡県でも販売を開始し、2023年春に開業予定となっています。まだ一棟も建っていないのですが、パースの段階で販売するのが私たちのビジネスポイントです。オーナーがついた状態でホテルを建設しますから、完成したときには投資回収が完了しています。逆に言うと、これまでのホテルはリスクを取りすぎていたと思います。
---従来のリスクを背負ってホテルをつくることが、果たして時代の趨勢(すうせい)にあっているのかというアンチテーゼなのですか?
コロナ禍だから受けているという見方もありますが、ホテル開発の資金調達の課題を解決するという、長期的な目線でのニーズもあると考えています。近い将来、
戻ってくるインバウンド需要に対応した、新しいホテルづくりとしてスタンダードになりうるビジネスモデルではないでしょうか。
---果たしてパースだけで販売できるのでしょうか?
いまはオンラインで何かを購入することに社会が慣れてきています。アパレル業界でいうと15年ぐらい前は、試着できないオンラインでは服は売れないと言われていましたが、いまでは当たり前のように購入しています。マンションもパースを見て購入したり、賃貸の契約をすることも増えてきています。
当社の物件のパースは、実際に建物が建っていると思ってもらえるほどリアリティのある仕上がりになっており、那須のパースなどは、公開したところ 4000件の問い合わせをいただきました。このとき、関心の高さとニーズの存在を実感しました。これはかなり大きな出来事です。現代のテクノロジーがこうしたシステムを後押ししていますね。
---どのような顧客層からの問い合わせが多いのですか?
一番多いのは IT企業の経営者の方でしょうか。そのほか上場企業の経営者、会員制リゾートホテルの会員権を持っている方など幅広い層です。
---投資的な側面もあるのでしょうか?
完全な投資商品はほかにも市場にたくさんあります。そのなかで、NOT A HOTELは自らが利用して、使わないときは収益になるという、そのあいまいさがよいのではないかと考えています。ホテルリートが求める年間利回り(IRR)は 8%以上ですが、個人の方が別荘としても使うとなれば期待利回りが下がることになります。 エモさ(エモーショナルな価値)をホテルに付加することで、購入された方の期待利回りが下がり、結果としてわれわれの WACC(加重平均資本コスト)を下げていくことにつながるという考えで設計しています。
NOT A HOTELが現在構想中の案件である、(左から順に)青島、那須、福岡のパース。物件価格はもちろんそれぞれではあるが、数千万~数億にのぼる。那須の物件はパー ス公開後、4000件の問い合わせを得ているという