地力を伸ばす社内への取り組み 今後はラグジュアリー層の取り込みも
---さまざまな施策を打ちながら需要の回復に備える中で、新卒・中途採用の計画や再開についてはどのようにお考えでしょうか。
採用については状況を見ながらになりますが、新卒採用は若干名でも実施したいというのが基本方針です。若手の社員は先輩という立場になることで視野の広がりや、モチベーションアップにつながります。そして「プロがプロを指導する」という、私どもが培ってきた伝統的なスタイルはコロナ禍であっても大切にしたいと考えています。稼働が6 ~ 7 割程度まで回復した段階で、徐々に採用も検討していきたいと考えていますが、現状の体制で効果的な運営力を備え、繁忙期を迎えられることが理想です。
---コロナ禍における社員への取り組み如何によって、企業の地力に大きな差が出てくると感じています。御社においては社内の交流を活発に行なったと伺ったことがありますが、詳しくお聞かせいただけますか。
社員一人一人の知見を深めるべく、コロナ禍のおよそ半年間、料飲・宿泊部門を中心に、本来の担当とは異なる業務を経験する機会を設けてきました。例えば、宿泊部門でも予約と接客では業務の視点は異なりますが、互いの仕事に当事者として関わることで知識の共有や向上だけでなく、組織そのものの一体感につながりました。さらに、今後は他部署との交流や研修、異動の機会を設けることで部署間の相互理解を深め、繁閑ある業務のスポット的なヘルプに入っていけるような体制を構築し、生産性も上げたいと考えています。
加えて、専門性を持った調理スタッフやソムリエなどの人材は、丁寧なレベルアップ育成が必要不可欠だと考えています。
---最後に、今後の展望や計画についてお聞かせください。
2019 年のG20 大阪サミットの開催をきっかけに、ロビーの改修や客室の改装を行ないましたが、関西の経済はここから大阪・関西万博やIRといった大きなビジネスチャンスが控えています。さまざまな需要が予想される中で、前半にお話した長期滞在プランは一つのキーコンテンツになると考えています。現在多くのホテルが長期滞在プランの販売を行なっていますが、販売期間が限定的であるようなものが多く、短期的な施策であることが伺えます。しかし当社では戦略的に取り組み、今回定めた9 月30日の販売終了日以降も調整を行ないながら、引き続き需要を伸ばしていきたい考えです。客室も複数タイプ用意することで、さまざまな目的を持ったお客さまの要望にもお応えできます。
さらに、高価格帯からブランド確立にも着手していきたいと考えています。2020年3 月は、ホテルのリニューアルや新規開業が相次ぎ競争が激化する中、他ホテルとの差別化を図るべく、タワーウイング23 階のエグゼクティブフロア「ザ・プレジデンシャルタワーズ」の専用ラウンジを改装して1.5 倍の広さに拡張し、内装デザインも刷新しました。その際に、1 階メインロビーからの世界観のつながりを意識し、ハード面をホテルのストーリーを感じる空間に生まれ変わらせるだけでなく、専用ラウンジでのお客さまの滞在の在り方を見直し、朝食からアフタヌーン、イブニングの時間帯に合わせた料理やドリンクの提供など、ソフト面も充実させました。まさにコロナ禍でのスタートとなりましたが、顧客からの評価は高く、そこに働くスタッフのスキルや意識もより高いものとなりました。なによりうれしく感じたことは、お客さまの中に「リーガロイヤルホテルにはこんな良いフロアがあるのか」とあらためてインプットいただけたことですね。
このような経験を励みに、エグゼクティブエリアへの投資や、商品力のアップを拡充していきたいと思います。顧客の体験から生まれたブランド価値を生かしたホテルステイのご提案として、ホテルで所蔵する絵画の見どころマップの制作や、近隣の文化的施設の情報提供などを積極的に進めています。居心地の良いホテルと感じていただき、リーガロイヤルホテルのファンとなっていただくべく、アフターコロナに向けて着実に取り組んでいます。インバウンドの需要回復には少し時間がかかりますが、まずは足元となる近隣圏のお客さまに「大阪にリーガロイヤルホテルありき」と支持される地盤を固め、ゆくゆくは世界のラグジュアリーホテルを知る方々にも「快適で安心できるホテル」とご満足いただけるよう努めてまいります。