価値観の変化やテクノロジーの進化で、人々の購買の習慣も変化をしていく。そのような時代を見据えた販売商品、チャネルの準備も必要だ。
先日、久々に時間があったので某有名百貨店に入り、歩いて店舗内を見てみた。相変わらずいくつかのフロアは客よりも店員の方が多いという状態で、暇な雰囲気がただよっていた。いつも人が多いのは地下の食品売り場くらいだろうか。
このような流れは以前から続いていて、先日山形県では百貨店の「大沼」が経営破綻し、全国の都道府県で唯一、日本百貨店協会加盟の百貨店が無くなったということで話題になっていた。大阪でも百貨店を改装してホテルにしたという事例もある。
百貨店だけでなく、大型ショッピングモールなど、彼らの強みは“品揃え”だったわけであるが、ネットでの買い物に慣れた人たちからするとそこへ行く時間や労力、移動費や駐車場などコストはじめ、「選択肢が多すぎて選べない」という「選べない世代」の台頭もあって時代に合わなくなっていると言う人もいる。
先日『2025年、人は「買い物」をしなくなる』(望月智之氏著、クロスメディア・パブリッシング)という本を読む機会があった。同書によると若者はもはや「ググる(Google で検索する)」ことすらしないそうだ。それは、スマートフォンが主流の彼らは数多くの選択肢から一つのものを選ぶことすらも大変な作業になっているそうで、自身が慣れ親しんだWEB やアプリを通じていち早く自身の欲しいものにたどり着くことが重要になっているというのだ。この「いち早く」という時短、スピードも大切で、これが5G の時代になればさらに加速していくとも著者は述べていた。
同時に興味深かったのは「D2C(Direct toCustomer)」という概念、流通チャネルが変化する中で、以前は卸や小売店舗を経由していたものが生産者と消費者がネットを通じてダイレクトにつながるというものだ。実際、ホテルやレストランでも食材や飲料の生産者と直接の取引をしているところもあるだろうが、この流れは好むと好まざるとにかかわらずさらに進んでいくだろう。 そうした価値観の世代が台頭する時代になれば、当然ホテルやレストランもこれまでにない発想で顧客にアプローチをしなくては時代に取り残されることになるだろう。AI などの登場によって進化し続ける「デジタルシェルフ(デジタル上の棚)」にはない、リアルな体験を提供できるかが鍵になる。わざわざ時間やコストをかけてそこに行かなければ得られない価値が提供できるところであれば人は集まるし、そうでなければ人はやってこない。
そうした価値観の世代へのアプローチには、若い世代のプロジェクトチームが必要だろう。古い価値観の世代の人間ではこの新しい流れを掴むことは難しい。若い世代のやる気を出させる取り組みの一環として、そうしたプロジェクトがあっても良いのではないだろうか。