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2020年3月6日号 TOP INTERVIEW 金沢 彩の庭ホテル 代表取締役社長 兼 支配人 本郷 一郎 氏

金沢 彩の庭ホテル  常識を“無視”したホテル運営が奏功。 独自の戦略で唯一無二のホテルを実現

【月刊HOTERES 2020年03月号】
2020年03月04日(水)
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金沢 彩の庭ホテルは、ホテルの常識やSWOT分析を無視するところから始まった

― 開業から5 年目を迎えられました。昨年2019 年はTripAdvisor が公表した「サービスで人気のホテル」で並み居る外資系ラグジュアリーホテルなどを押しのけ日本でNo.1を獲得され、さらに、「朝食のおいしいホテルランキング」で全国8位(2017、18 年は5 位)に選ばれるなど、悪立地の、小さな、無名のホテルが、驚くべき結果を生み出されました。 最初は周囲から「これでうまくいくのか?」という声が聞かれたのは事実です。私が開業時にお伺いしたときも、今の姿は想像できませんでした。ただ、当時のインタビュー(本誌2015 年7月10 日号)を振り返ると、今やっていらっしゃることと変わらないことをおっしゃっているんですよね。

 ありがとうございます。おっしゃっていただいたように普通に考えれば不利な点ばかりの環境でしたので、普通のホテルをやってしまってはうまく行かないと考えていました。理想のホテルをつくるためには、日本で普通とされているホテルの常識、そしてSWOT 分析といったものを無視することが必要だと考えました。

 立地が悪くて閑静な住宅街の中にホテルにある分、白山がきれいに見えます。立地が悪い分5000 平米と敷地は広かったので、それを部屋で埋めるのではなく、大野庄用水を生かし、さらに敷地内に「森の庭」、「川の庭」、「中の庭」、「山の庭」という四つの庭を設け、「金沢の別邸」をコンセプトとするなど、ないものを嘆く「ないものねだり」ではなく、良い所を見つけて生かす「あるもの探し」からスタートしました。

 また、開業の2015 年あたりからさまざまなホテルチェーンが新たな宿泊主体型ホテルの業態開発に取り組んでいましたが、私が大切にしたのは、ホテルの本質である3B(Bed、Bath、Breakfast)と同時に、スタッフのホスピタリティーでした。Bed やBath はハードですが、Breakfast とスタッフのホスピタリティーは磨き続けることができます。ここに関しては、非常に力を入れて取り組んできました。それが、おっしゃっていただいたTripAdvisor など外部の評価を得ることにつながったのです。


レピュテーションが販促、スタッフのモチベーション向上など、ホテルのエンジンに

― 特に、金沢 彩の庭ホテルでは口コミ、レピュテーションマネジメントに大きく力を入れられています。

 金沢 彩の庭ホテルは開業時一流のスタッフを集めたとは思っていません。しかし、お客さまに喜んでもらうことを喜べるスタッフが集まってきました。ですから、口コミなどで高い評価をもらえると、モチベーションも上がる。CS という歯車が回ると、ES という歯車が回る。そして、またCS が上がる…と歯車が回っていきます。それが好循環となって、口コミは販促に繋がり、最終的には当然ホテルの収益も向上します。この、口コミというのが大切な指標で、大きな武器となってくれ
ました。そこに、投資はいらないのです。

 結果として、金沢彩の庭ホテルでは売り上げベースで当初の計画より約25%上を行き続けることができています。私たちのホテルでは、その分を改善が必要な設備面への投資やスタッフの研修などにあてています。参考となりそうなホテルに試泊に行かせたり、現在はスタッフが一名会社の経費でオーストラリアに語学研修にも行っています。

 もうひとつ、ホテルの常識を無視しているという点では、金沢 彩の庭ホテルは、リアルエージェントとのお付き合いがほとんどありません。ですから、営業スタッフはセールス活動をしていません。彼らがやっているのは、口コミの返信などレピュテーションマネジメントや、WEB での販売です。

 そうした戦略は、このホテルが開業した2015 年3 月、北陸新幹線が開業した金沢という地において、常識と真逆を行くものであったかもしれません。当初、さまざまな人から「これでうまくいくわけがない」、「成功しない」といったお声をいただいていました。私にとっても大きな挑戦でしたが、今、このような結果を出せたことをうれしく思っています。

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