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なぜハレクラニのスタッフはイキイキとしているのか? 沖縄だけでなく全国から人が集まる理由とは?

なぜハレクラニのスタッフはイキイキとしているのか? 沖縄だけでなく全国から人が集まる理由とは?

2020年02月24日(月)
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「ラグジュアリーホテル業界を目指す人であれば、この会社以外に選択肢はないと言い切れる環境を整えていく。」と、ハレクラニ沖縄の総支配人 吉江 潤氏は堂々と語る。
ハワイで100年を超す歴史を持つハレクラニが沖縄に開業して約6カ月。まだ新しいチームにもかかわらずスタッフがイキイキと仕事をし、それがゲストの好評を得て業績も好調だ。
 
スタッフがイキイキと働き(ES)、それがゲストの喜びにつながり(CS)、ハレクラニ沖縄の高い業績につながっている(Profit)。
【CS⇒ES⇒Profit】の理想的なサイクルである「サービスプロフィットチェーン」をまさに実現しているのだ。

なぜ、ハレクラニ沖縄に全国からホテリエたちが集まり、驚くほどスタッフがイキイキと働いているのか。その秘密を探ってみた。



三井不動産株式会社
ホテル・リゾート本部 沖縄プロジェクト準備室 室長
三井不動産リゾートマネジメント株式会社
代表取締役社長
洲戸 渉氏
 
ハレクラニ沖縄
総支配人
吉江 潤氏


スタッフはイキイキ。そして業績も好調。
それを実現できた理由は「オーナー」と「“いい人” 集め」
 
2019年7月26日に開業したハレクラニ沖縄。最初に立てた目標は「沖縄のマーケットで一番になる」というものだったという。
 
だが、さすがのハレクラニとはいえ簡単ではない。沖縄には外資系ラグジュアリーブランドのホテルもあれば、歴史ある、多くのゲストに愛されてきたような素晴らしいホテルもある。「簡単ではないぞ。」関係者は誰もが解っていた。
 
ところが、その予想は良い意味で裏切られた。業績は当初の予定よりも上回り、顧客評価はさすがに開業直後の夏のハイシーズンは苦労も多かったが、年末年始のハイシーズンは多くのゲストから好評を得た。特にスタッフのサービスを評価する声が多い。
 
開業して半年あまり。その短い期間でそれを実現できたホテルは近年多くのホテルが開業する中でも少ない。ましてや、期待値の高いゲストばかりがやってくるラグジュアリーホテルにおいて。
 
その好評を得るスタッフのサービスを実現した一つの要因は、周到な準備期間だ。ハレクラニ沖縄では現場の一般スタッフでも約3カ月前の入社という長いトレーニング期間を用意した。
 
この、何がすごいのか?
 
開業するまでの準備期間は当然売り上げが発生しない。つまり、人件費はすべてコストとして垂れ流しになる。通常はホテル、オーナーともにそれを避けたいもの。だから、通常は一般スタッフの入社はもっと後になる。
 
しかし、オーナーである三井不動産が、世界に名前が知られた「ハレクラニ」という素晴らしいブランドを沖縄に持ってくるにあたり大切にしたのは、短期的な数字よりも高い期待値を持ってやってくるゲストの期待に応えること。そして、それによって評価を獲得し、中長期的に国内外から選ばれる世界を代表するリゾートを創ることであった。
 
オーナーである三井不動産からやってきた洲戸氏いわく「三井不動産は1981年にハワイのハレクラニを取得して以来、世界中のあらゆる地で二軒目のハレクラニの可能性を模索していた。」という。いくつもの候補地が浮上し、厳しい基準に合わずに消えていった…。30年を超える月日を経て実現した本プロジェクト。「数字はもちろん大切ですが、私たち三井不動産にとってそれは短期的な視点ではありません。世界に誇れる質の高いホテルを実現すること。それができれば中長期的に自然と数字もついてくると考えています。」(洲戸氏)
 
近年、ホテル業界に過度に注目が集まり、アップスケールやラグジュアリーといえども、数字重視のホテルが少なくない。そして、そのようなホテルではスタッフが疲弊していくといったことは全国で起こっている。それとは違う、本来の中長期的なホテルとしての事業目線。だからこそ、この沖縄の恩納村という地にも関わらず、沖縄のみならず海外含む全国から人が集まり、イキイキと働けているのだろう。


三井不動産株式会社 ホテル・リゾート本部 沖縄プロジェクト準備室 室長                      三井不動産リゾートマネジメント株式会社 代表取締役社長 洲戸 渉氏


「あなたは “いい人” ですか?」
“いい人” が集まれば、“いい組織” になる
 
スタッフがイキイキと楽しそうに働くもうひとつの理由に「“いい人” 集め」に徹底したことがある。
吉江氏は、幹部およびスタッフの採用にあたり、“いい人”を採用することにこだわった。幹部職にはスキルや経験が必要だが、それだけではなく、“いい人” であることを求めた。「“いい人” が集まれば “いい組織” になると考えたのです。」と吉江氏は言う。
 
・「すべての人に対して思いやりを持って発言できる人」
・「すべての人に対して思いやりを持って行動できる人」
・「チームワークを重んじて、チームワークを実践できる人」
 
これが、吉江氏、そしてハレクラニ沖縄メンバーの考える “いい人” の定義。ゲストだけでなく、スタッフ、チームを大切にできるかどうかを重視している点が特徴的だ。だからこそ、ホテリエとしての経験よりも人柄を見る。その結果、例えば「ゲストサービス」というポジションのスタッフは半数以上がホテル未経験者となった。
 
実は、これはとても重要だ。世界中のトップクラスのラグジュアリーホテルの総支配人たちに、「あなたは人の何を見て採用しますか?」と聞くと、皆、「“Skill(技術や経験)” ではなく “Attitude(人柄や仕事に取り組む姿勢)”」だと答える。そして同時に、彼らは、こう口を揃えて言う。
 
「”Skill” can train, but “Attitude” can’t train.」
(“Skill” はトレーニングできる。しかし、“Attitude” はトレーニングできない。)
 
「あなたは “いい人” ですか?」― これはスタッフだけでなく幹部メンバーも含め、実際にインタビューでされた質問の一つだ。ラグジュアリーホテルといえばゲストの期待値も高い。一般的にはスタッフのスキルを見がちだ。しかし、スキルはあっても “いい人” でなければ良い組織はつくれない。「”Skill” can train, but “Attitude” can’t train.」言うのは簡単だが、日々、高いクオリティーが求められる中で辛抱強くこれを貫くことは簡単ではない。しかし、そこを愚直にやりきる。これも、ラグジュアリーを含むさまざまなホテルを経験してきた吉江氏の経験によるものだ。
 
 
“いい人” が集まった組織を導いていった
「“オハナ” の精神」と「ハレクラニ スタイル」
 
“いい人” が集まっただけでは当然良いホテルは実現できない。それを形にしたのは、ハワイのハレクラニから引き継ぐ「オハナ(=家族)の精神」と、吉江氏および幹部メンバーが築き上げた「ハレクラニ スタイル」という行動指針だ。
 
ハレクラニ沖縄の開業にあたり、吉江氏はじめ多くのメンバーがハワイのハレクラニにも研修に訪れた。そして、ハワイのハレクラニの幹部から吉江氏が守って欲しいと言われたのは、たった一つのことだった。
 
「『ハレクラニの核となっている“オハナ” の精神だけは大切にして欲しい。』と言われました。ハワイと沖縄は環境も違う。でも違うところが多くあっても、その核だけは大切にしてほしい、と。」(吉江氏)
 
“オハナ”とはハワイ語で「家族」を指す。スタッフはもちろん、ゲストも “オハナ”なのだ。ハワイのハレクラニで働いている全員が “オハナ” としてお互いに思いやり、一緒に喜びを分かち合う。そして、ゲストも “オハナ” として温かくお迎えする。その “オハナ” の精神を大切にすることで、ハワイのハレクラニは100年を超える今でも世界でもトップクラスのリゾートとしての地位を確立してきた。
 
真剣に運営をしていれば、当然スタッフ同士での考え方の相違や意見の対立がないわけではない。それでも「私達は“オハナ” なんだから」という言葉が、皆をつなぐ。スタッフ同士が飲みに行っても「“オハナ” なんだから」と、同じ皿を皆で突き合うこともある、とあるスタッフは話す。上司、部下、同僚、それぞれが同じホテルで働くメンバーを家族のように思い大切にできること。これがハレクラニ沖縄の組織文化の強固なベースとなっている。
 
“いい人” が集まり、“オハナの精神” が組織の精神的な支柱になる。そして、ハレクラニのスタッフがあるべき姿を示した「ハレクラニ スタイル」という行動指針が、進むべき道を照らし出す。
 
スタッフは、皆この「ハレクラニ スタイル」を毎日の勤務開始時に行なう朝礼「スタートアップ」において、ディスカッションを行なう。そこでは、上司も部下も対等に意見を交換し合う。吉江氏は言う。「上下関係ではなく、人対人の対等なコミュニケーションを取ることができる人間関係をベースにカルチャーづくりを進めています。上司から与えられた指示に部下が従うという構図ではなく、働いている人たちが現場で日々感じていることを意見として出し合いながら仕事を進めていくことができる環境を大切にしています。」こうした毎日の積み重ねが、スタッフの意識を高めていく。
 
「今、このホテルは何を目指していますか?」
 
そんな質問に、幹部だけでなく、新入社員もすぐに答えが返ってくる。中長期的には「世界を代表するラグジュアリーリゾート」を目指し、目下ではフォーブスの5スターの獲得を目指し、日々の課題に向き合っている。スタッフ全員が “オハナ” として、目標を共有し、日々努力を積み重ねているのだ。


ハレクラニ沖縄 総支配人 吉江 潤氏


働くのも、プライベートも最高の環境
それを支えるオーナーの姿勢
 
ハレクラニ沖縄で働くことの魅力は決して職場環境だけではない。多くの人が、沖縄のきれいな海、そして夕日を見たいとやってくる。ハレクラニ沖縄では、それを毎日見ることができる。そして、休日にはリゾートライフを満喫できる。
 
「“オハナ” として沖縄で働くメリットは、都会ではできないことを日常生活の中でできる点だと思います。休日には午前中にゴルフをして、午後には仲間とバーベキューをするようなこともできます。オン/オフの切り替えがすんなりとできる。採用面接のときに人材開発部長が語るのは、『通勤が観光』。満員電車に揺られるようなことなく、美しい海を見ながら通勤できます。」(吉江氏)。実際、東京からやってきた多くのスタッフが「都会の窮屈な生活から開放されました。」と言う。
 
もちろん、三井不動産グループのホテルとして労働環境は大切に守られている。月最低9日は休日をとれるように、“オハナ” 同士がサポートをし合っている。さまざまなスタッフの話を聞いている中で印象的だったのが、調理の若手スタッフ同士が「上司を帰らせる(休ませる)」ために協力し合うなど、本当に “オハナ” の精神がたった半年あまりで根付いていることだった。
 
「ラグジュアリーホテル業界を目指す人であれば、この会社以外に選択肢はないと私は思います。」と吉江氏が言うと、
 
「そう言い切れるように私たちがさらに良い環境を創り上げていかなければならないと、決意を新たにしているところです。」と洲戸氏。
 
オーナーとオペレーターの理想的な関係。それによって生まれるスタッフのイキイキとしたサービス。だからこそ得られるゲストからの高い評価。
最近は、ラグジュアリーといえども経済的な都合ばかりが聞かれがちなホテル業界だが、ホテルとしての本当のあるべき姿、ホテリエとして働くうえで最上の環境がここにあるのかもしれないと、強く感じさせられるのが、このハレクラニ沖縄だ。

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本レポートは全5回です。

レポート1沖縄にやってきた世界屈指のリゾート 「天国にふさわしい館」が沖縄へ

レポート2なぜハレクラニのスタッフはイキイキとしているのか? 沖縄だけでなく全国から人が集まる理由とは?(今回)

レポート3その1こんなに楽しく働くことができるホテルは他にはない。「日本一ハッピーなホテル」だと自信を持って言える。
      その2目指すは世界を代表するラグジュアリーリゾート。 若いスタッフが大きく成長できる環境がここにある。
     その3チーム・チーム・チーム!

レポート4その1 楽しく調理しないと、おいしい料理は絶対にできない。 ハレクラニ沖縄カリナリーチームの人を育てる環境づくり
     その2 「顔がやさしくなったね」 心に余裕ができ、やさしくなれる。 そんな環境がここにある。

レポート5その1 東京から沖縄へ移住! わくわくする魅力的な場所で自ら率先して動くことができるホテリエに (今回)
     その2 「大好きな仲間がいる」ハレクラニ沖縄の理想的な環境

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