―しかし、なかなか同じ屋根の下にいても、料理のジャンルを超えて疑問を投げかけるのは簡単なことではありません。澤田シェフの熱い思いがあったからこそです。ところで現在、厨房スタッフは何名いらっしゃいますか。
7人で切り盛りしています。当店では厨房だけではなくサービスもスタッフが交代でおこなっています。お客さまの前にでることは1人の社会人としてとても重要です。お客さまの気持ちに立って、どのようなサービスをすればご満足いただけるのか、どのタイミングでお勧めすれば良いのか、またお勧めするためには何を学ばなくてはならないのかなど、お客さまを軸に自己成長することができるからです。厨房にこもっているとお客さまの表情も見えません。自分たちが作った料理に対する反応や表情、声をお聞きすることで改善点やもっと伸ばしていかなければならないことなどが、肌で分かるようになります。
―それはとても大切なことです。ライブ感覚でストレートに感じたり、お客さまと会話をしたりなど、コミュニケーション力をたかめることができます。
その前にまずは社会人として当たり前のことができるようになることです。飲食業は自分一人の力ではできません。お店へ足を運んでいただけるお客さまはもちろんですが、食材の仕入れなどに関わっているパートナー企業様もとても大切なお客さまです。そのためには当たり前のことですが“ あいさつをする”“ 時間を守る”“ 感謝の気持ちを持つこと” を徹底させ、根本的な人間改革を行なっています。そして“ 当たり前を疑う” ことです。当たり前のことが本当に良いのか?を常に考える癖をつけることです。疑問を感じたらすぐに聞けば、その解決方法を私のスタイルや本を勧めるなど解決法を導いていきます。
―スタッフ一人一人にとても親切に指導していらっしゃいますね。
スタッフの将来を考えると皆、幸せであってほしいと願っています。毎日のミーティングでも本日のお客さまの確認ではなく、自分の将来はどうなりたいのか? そのためには今、何をすべきかを考える習慣を身につけるようにしています。料理人として道を切り開いていくことは決して簡単なことではありません。独立してお店を構えるようになれば料理を作っているだけではなく、売り上げ目標を立てたり原価計算をしたりなど経営者としての知識もなければ正しい経営はできません。そのために月単位で自身の目標を決め、目標に対して日々どうなのかも常に問いただしています。目標なく単に業務をこなしているだけでは刹那的であり、自分の将来設計を描くことができないからです。加えて毎日、会話をすることで話をすることに対する苦手意識も弱くなり、またどのように話をすれば理解されるのかを考えるようになります。まずは考えるという力、習慣をつけることが大切なのです。
―多忙になるほどに、どうしても流れ作業的になりがちです。
どんなときでも料理人はお客さまのことを考えなくてはなりません。自分が作りたい料理を押し付けるのではなく、お客さまの立場に立ってお客さまが求めている料理をつくれることが大切です。そのためには自分がお客だったらどんな料理を食べたいのか、温かい方が良いのか、肉の切り方はどうなのかなど、常に対峙させることです。お客さま1人1人に対して“ おいしい料理を食べて笑顔で幸せになってほしい” という気持ちがなければできないことです。お客さまの笑顔が料理人の喜びです。どれだけの笑顔がお店に広げることができるかが、店舗運営の生命線でもあるのです。とにかくお客さまも、スタッフも皆、幸せになってほしいという気持ちいっぱいなのです。
―スタッフもとても幸せです。そこまで皆こと、そして将来のことを真剣に考えてくれるシェフは少ないことでしょう。最後に今後の計画などお聞かせください。
今秋10 月にバルスタイルの中華料理店を開業する計画です。店長も決めました。これからはここで育ったメンバーが自分のお城として働けるよう、店舗作りも進めていきたいと思います。また四季折々の食材に恵まれた日本ならでなの中国料理を世界へ発信していきたいですね。
(株)セブンスイノベーション 代表取締役 中国菜 エスサワダ オーナーシェフ 澤田州平氏
厨房哲学 第5 回 お客さまもスタッフも 皆、あふれだすほどの笑顔で 幸せになってほしい
【月刊HOTERES 2019年08月号】
2019年08月30日(金)