新元号「令和」。明治・大正・昭和、そして平成とつむいできた日本人の魂は「令和」へと引き継がれていく。日本には四季があり、四季があるからこそ、さまざまな文化が芽生えてきた。食文化においても世界のさまざまな食材を使い、柔軟に受け入れる日本人の寛容な心があるからこそ、ユニークでバラエティに富んだ料理がプロデュースされている。そこには腕利きシェフ(料理長)の感性や技術が凝縮されています。そこで今号より1年間、月1回の連載企画として「厨房哲学」(仮称)と題し、シェフや料理長のインタビューを進めていく。料理に対する情熱、食材への愛情、仕事仲間に対する姿勢、会社と自分の関係など多岐にわたり人生論を語っていただき、人材不足打破のためにも、人々に喜びを与える素晴らしい仕事であることを、熱いメッセージから伝えていきたい。
西野 剛氏(にしの・つよし)
1967 年生まれ。ホテルでの経験を積んだ後、渡仏。フランスの三ツ星レストランでさらに腕を磨き、帰国後は外資系ホテルなどを経験し、八芳園入社。八芳園内「白鳳館」で料理長を務めるかたわら、統括料理長として生産者のもとへ自ら足を運び、素材を吟味することを欠かさない。育った土、環境、そして生産者と直接触れることで、素材に対する理解と愛を深め、新たな料理を生み出している。得意料理は、生産者から届く野菜と肉を使ったナチュラルフレンチ。料理を作る上で最も大切にしているのは「温故知新」。料理人として長い経験の中で培ってきた知識を基にしながらも、常に新たな挑戦を欠かさず、どんな人にも安心で安全な食を提供すべく、美しく、そして物語のある料理を生み出し続けている。
―専門式場「八芳園」から、これまで培ってきたウエディングのノウハウや技術、感性を生かして世界に向けたMICE に取り組み、外国人にも感動を与えるパーティーをチームで作り上げています。さまざまな問題を解決し、お客さまが求めていることを追求し、食においてもさまざまな改善や取り組みをされていらっしゃいます。西野統括料理長も生産者のもとへ自ら足を運び、新たな料理にチャレンジしています。初めになぜ、料理の世界に一歩踏み出したのか、きっかけを教えてください。
西野 昔、タイム21 という報道番組で三國シェフの調理の現場のルポを見たことに始まります。手がやけどするくらいの熱いお皿やそこに並べられた美しいフランス料理に感動しました。厳しく、過酷な現場でしたが、だからこそ挑戦して三國シェフのような美しいフランス料理を修行して作れるようになりたいと思ったのです。アルバイトにてファミリーレストランで調理をしていましたし、物を作ることが好きだったこともあります。