日本を除くアジアの経済成長や日本におけるグローバル化など取り巻く環境が変化している。次世代を生きる若者にとって自身はどのようにして生きていくべきか、先が見えない状況にもがいている。ホテル業界においても、自分の将来が思い描けないホテリエの増加が懸念されている。そこで今回はホテルキャリア16 年、神戸国際大学 経済学部 国際文化ビジネス・観光学科 専任講師 服部淳一氏に、ホテリエのキャリア・デザインの必要性などをお聞きした。
福永 プロフィールを拝見すると大学卒業後、2003 年から2019 年まで16 年間ホテリエを経験され、その経験を生かされ今年から神戸国際大学の教壇に立たれていらっしゃいます。
2017 年には第10 回タップアワードにおいて「ホテリエのキャリア・デザイン 高離職業界に留まる人達のトランジョンに着目して」の論文で最優秀賞を受賞されました。ホテル業界の離職率の高さは業界として改善すべきことですが、実状は遅々としています。そこで今回はホテリエのキャリア・デザインや次世代に求めることなどをお聞きできればと思います。初めになぜホテル業界を選択されたのか、お聞かせください。
服部 高校と大学の7 年間、マクドナルドでアルバイトをしていました。小さなお店だったので店舗運営も一部任され、責任者として勤務していた週末のある日、のちに『ハッピーセット事件』と自ら呼んでいる出来事がありました。お子様がお父様と一緒に来店し、ハッピーセットを注文されたのですが、お子様がほしいおもちゃの在庫が店舗になかったのです。楽しみにしていたお子様はがっかりです。その表情を見ていると「なんとかしてあげたい」という気持ちになり、近隣の店舗に在庫を確認し、唯一あった一点を他店舗まで取りに行き、お子様にお渡ししました。お子様はもちろん、お父様にもとても喜んでいただき本当にうれしかったのですが、そのことを後日店長に報告すると“やり過ぎだ”“そこまで1 人のお客様を特別扱いしなくてもいい”と注意されたのです。就職活動が始まる直前の大学3 年生のときでした。
そのとき感じたモヤモヤが、のちに“1 人を特別扱いするのがダメなら、全員を特別扱いできる仕事に就きたい”という思いに繋がり、ホテル業界に一本に絞った就職活動を始めるきっかけとなったんです。