一方、インバウンドはどうか。この数年順調に増加し続けており、すでに50 万人は超えているという。しかも個人客の利用が年々増加。この流れは箱根観光業界にとって大きな追い風となっているが、新たな問題も持ち上がっている。
海外旅行となると大きなカバンを持っての移動は当たり前。これが移動するにあたり大きな障害となっているというのだ。
外国人旅行者、特にアジア系の人々はバスの移動を利用するケースが目立つ。チェックアウトすると、すぐ目の前のバス停留場に直行。次の目的地までバスを利用する。カップルだったり、少人数のグループだったり。実際そういうバス停で待っているケースをいくつも目にした。バス停では決まって大きなスーツケースを持っている。しかも1人で二つも三つも。
箱根のバスは東京などの都市と比べて旧タイプが多く、大きな荷物を置くスペースが確保されていないものがほとんどだという。そのため、バスの中は大混雑。乗り降りするのに相当な時間を要し、どんどん遅れていく。バスが遅れるだけではすまない。バス停での長引く停車は、後続する一般乗用車の流れもストップ。これが渋滞の連鎖を引き起こしているのだ。
箱根の主要道路である国道、県道などは片側1 車線。バスが止まれば追い越すことはできない。以前より拡幅工事は地元民の念願であったが、山間の道だけに工事は難しく一向に進んでいない。そこにインバウンドの大量流入だ。ホテル、旅館の従業員の出勤時間にも影響を与えており悩ましい問題となっている。
もう一つ、宿泊業界の耳目を集めているのが外資系ホテルの進出だ。この秋にIHG(インターコンチネンタルホテルズグループ)の日本初進出ブランドとなる全室温泉付きの「インディゴ箱根・強羅」。それからマリオットの「コートヤード箱根」。外資系ホテルが話題をさらっている中で日本資本のホテル建設も次々とオープンしている。傾向としては小規模高級が目立つ。
話題となっているのがもう一つ。空中からの撮影ができるドローン。これを持ち込む外国人が増えており、箱根の渓谷を撮影する姿を時々見かけるという。ところが、箱根には露天風呂を楽しむお客も多く、自然の雄大さを撮影する際、偶然に入浴シーンを撮影されたらどうしようという心配が起こっている。これでは安心して入浴を楽しむことはできまい。
ますます小さく、性能もよくなったドローン。温泉を売り物にする箱根に思わぬ心配を巻き起こしている。東京オリンピックに向けてますます増えていく外国人観光客。箱根観光の今後が注目される。
本誌 松沢良治 ニュースな話&人物クローズアップ
インバウンドでにぎわう箱根
【月刊HOTERES 2019年04月号】
2019年04月15日(月)