「会社に眠る財産」に気づけたときが
変革の出発点である
岡村衡一郎
(おかむら・こういちろう)
1971 年生まれ。亜細亜大学卒。㈱船井総合研究所を経て、2004 年㈱スコラ・コンサルト入社。120 社を超える企業変革を支える。「会社が変わるとは何か」、「人がイキイキ働くには何が必要なのか」を考え続け、「一品」という変革コンセプトを発見、体系化する。支援先の起源や今あるリソースを足場に、「あるもの」から「ないもの」を生み出す一品イノベーションに多くの経営者ファンを持つ。変わるためのテコをあぶりだす「経営者オフサイト」、「『一品』で会社が変わるワークショップ」を主催。著書に『一品で会社を変える』(東洋経済新報社)『30 代でチームのリーダーになったら最初に読む本』(同社)など
変化に追われるリーダーのための実践的イノベーションメソッドとして、ホテル業の事例にとどまらず、多く企業変革の現場から生まれた「チェンジング・メソッド」として紹介していた48 種。そのPart 2 としてお届けする。
自分たちらしさを失わないで会社を変えたい、しかも現有のメンバーでミニマムに取り組みたいというとき、私がまず目を向けるのは、未来の話ではなく、長期にわたって会社に蓄積された有形・無形の「財産」です。
今日に至る事業の歴史や、今の仕事の基盤を成している分厚い経営の蓄積の中には、先達の苦労や試行錯誤の粋が詰まった“価値創造のタネ”が隠れているからです。
例えば、
・ 「過去もの」として無条件にお蔵入りしているもの
・ 経営の交代や刷新によって不適合扱いになったもの
・ 身近にありすぎて社内では誰も鮮度を感じなくなっているもの
・ 「過去の成功体験にとらわれない」ため意図的に排除しているもの
など、無自覚に封印している財産はどこの会社にもあります。
成功や失敗の経験やプロセス、技術、技能・知恵・ノウハウ、商品づくりや販売などの着想・アイデア、ビジネスの思想や価値観、組織や仕事のスタイル・文化、人材特性、顧客との関係性など先達が多大なエネルギーやリソースを投じて考案し、一時代を築いた足下の財産から、新たな価値と可能性を見出した例を取り上げてみましょう。