福永 まさにロイヤルホテル一筋ですね。総支配人経験も豊富な中、ホテルを運営するに当たり一番大切にされてこられたのは何でしょうか。
髙田 “ホテルは人が命”であることです。ホテルには国内外から多くの方がご宿泊されたり、お食事や宴会などに足を運ばれたりしていらっしゃいます。さまざまな目的でホテルに足を運ばれた方々が安心して過ごせる場所であることが第一です。そして大切な時間をご満足いただくために大切なことは、お客さまとのコミュニケーションです。お客さまが求められていることに対してきちんと対応しそれ期待以上のことをお返しするためにも、情報を収集するだけでなく個人個人の教養の積み重ねが大切になってきます。通り一遍の対応ではなくお客さまに顔を向けて対応することが顧客満足度を高めるためには欠かせないことです。ホテルは顧客満足(CS)と従業員満足(ES)、そして安定した利益を得ているかが生命線であり、そのためにも経営陣含め日々、切磋琢磨していくことを実現していくことだと思います。
福永 奈良のスモールラグジュアリーホテルに立ち寄った際に、スタッフの方に丁寧にご対応いただき、とても心地よく過ごさせていただいたことを覚えています。ちょっとしたことですが、顧客満足度は高まりますね。
髙田 運営受託契約をしていましたが、客室は14 室、まさにスモールラグジュアリーホテルです。ホテルスタッフは20 人ほどでした。私が赴任する以前から、サービスマインドも高く予約サイトでの口コミ評価でも東京・京都・大阪の主要ホテル比較でもトップクラスの点をマークするなどお客様から高評価をいただいていました。その中でさらに顧客満足度を高めていくために、奥深い奈良の歴史を学ぶための観光勉強会を開きました。もちろん、著名な観光地のインフォメーションは十分できるのですが、情報が少なくあまり知られていない観光地など、歴史や文化に精通したお客さまから問い合わせがあったときにきちんと対応できることのより顧客満足度を高められるとともに、ご満足いただいたことに対するモチベーションアップを図ることができると考えたからです。
また自身が知らなかった奈良の魅力を知ることで、ますます奈良への思いも熱くなり、その思いはお客さまに伝播し、結果的にリピートや高評価をいただく結果を得ることが出来ます。勉強会を始めたら私自身が奈良の歴史に魅了されてしまい、興味は古代史まで広がってしまったほどです。観光地に建つホテルにおいてCS、ESともに高めることが出来るのは、歴史・文化・生活を踏まえた深い観光情報の提供であることを実感しました。福永 地元で育っていても知らないことがあったり、歴史的な背景を語れる方は多くはいなかったりするかもしれませんね。特に歴史や文化が観光のポイントである奈良においては、ときにはお客さまの方が詳しいこともあるでしょう。その差を少しでもなくしていくことも、コンシェルジュ的なポジションとしてホテルの人材に求められることです。外国人の観光客も増えていますので、歴史に精通し、外国語対応できる接客はますます求められますね。
髙田 実際、奈良の場合、外国人観光客の宿泊は2 割ほどですが、政府の政策も後押しし、今後は増えていくことでしょう。また大学の観光学科の学生の30%が留学生で、私が担当するホテル事業経営論は105 人の講習生のうち30%が留学生となっています。主にはアジアからの学生ですが、とても熱心に授業に取り組んでいますね。日本に残るか母国に帰るかはそれぞれですが、多くは観光事業につく事を前提で来日していますので本気度が高い。それに応えないといけません。観光学科は人間社会学部に所属し、“観光ビジネスのスキルを備え、高い人間力を有する学生を育てる”をコンセプトに掲げ、観光事業コースとホテル・ブライダルコースがあります。ホテル・ブライダルコースでは即戦力として活躍できる人材育成に注力しています。観光やホスピタリティマネジメントなどの原理、ホテルやブライダルについての事業知識や技術を学びます。一方担当している「ホテル事業経営論」には、ホテルのことをよく知らない学生も受講しますので、そういった学生にこそホテル業の奥深い魅力を講義を通して知ってもらい、一人でも多くの理解者であったり、利用者であったり、実際に就職を検討する学生が増えればと思っています。