近年の食物アレルギーを含むアレルギー疾患の急増を受け、2015 年12 月までにアレルギー疾患対策への指針策定を国に義務づける「アレルギー疾患対策基本法」の実施が始まる。フードビジネスに携わる企業はもちろん、国民もまたアレルギー疾患に関する正しい知識を備え、注意を払うことを努めなければならなくなるという。そこで、現時点の当事者だけでなく、改めて識しるべき「アレルギー対応」について発信する。
アレルギー対応が素晴らしい事業者
がアレルギーのない人から選ばれる
社会を目指して
週刊ホテルレストランをご愛読の皆さま、はじめまして。私は、NPO 法人アレルギーっこパパの会(以下、アレパパ)の代表を務めている、今村慎太郎と申します。この度、縁あって、本誌「週刊HOTERES」上で外食アレルギー対応について毎月掲載していただくことになりました。毎月1 回、企業との取り組みを通して見聞きし、感じた外食事業者のアレルギー対応に関することや、外食事業者の皆さまのアレルギー対応に役立つ情報をお届けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まずは、連載開始にともない、自己紹介をさせていただきます。私がアレパパを立ち上げるきっかけとなったのは、娘の食物アレルギーです。6年前に生まれた娘は、生後半年で食物アレルギーと診断されました。なんとなく聞いたことがあるくらいの「食物アレルギー」をある日、突然伝えられ、その日を境に生活が大きく変わりました。
食物アレルギーと診断された当時の娘の原因食品は「卵」「乳」「小麦」「大豆」、母乳からも原因食品を摂取してしまうため、妻も同じ食品の除去が必要でした。原因食品が含まれていない食品を探すため、買い物先では端から端まで商品をひっくり返しては、記載されている原材料のすべてを確認する生活が始まります。今では、原因食品の数が少なくなり、食物アレルギーとの生活にも慣れましたが、いまだ日常生活のさまざまな場面で立ちはだかる社会の高い壁に向き合いながら生活をしています。そんな生活の中で、外食分野の食物アレルギーに対する取り組みが遅れていることを実感し、同時に当事者の立場で外食事業者を支援できることがあることに気づきました。食物アレルギーになったとしても、リスクや疎外感なく、外食が安全に楽しめる社会に必要なことは何か? このことばかりを日々考え生きています。
さて、アレパパの活動についてご紹介させていただきます。
アレパパでは、「アレルギー対応にしっかり取り組んでいる外食事業者が、アレルギーがない人から選ばれる社会」を目指して活動をしています。食物アレルギーの方の外食環境の質向上は、企業の食物アレルギーリスクマネジメント向上と一致します。つまり、事業者がアレルギー対応する上で発生するリスクを事前に判断し、それに対応することで、食物アレルギーの方の安全確保と外食環境の質が向上します。そのため、アレパパでは外食事業者のアレルギー対応支援を行なっています。具体的には、研修・講演、コンサルティング、メニュー開発やアレルギー対応の安全をつくるためのコミュニケーションツール「アレコミュ」をサービスとして提供しています。小さなケーキ店から外食チェーン、ホテルのレストランなどさまざまな業態から相談いただき、支援を行なっている状況です。