ローカルの需要にアジャストさせながら
客室レートの価値を市場に認めてもらう
❐ 稼働率とADR についてはどのような考え方をしていきますか。
銀座界隈の既存のホテルのほとんどは稼働率90%以上というのが現状で、ADR は約2万円を見受けます。そんな中、ハイアット セントリック 銀座 東京は稼働率90%という形は考えておらず、開業から2 カ月、今のところADR は4 万円前後で推移しています。
稼働率とADR のバランスについては、ハイアット セントリック 銀座 東京というブランドに対してマーケットがどのように反応するのかを慎重に見極めながら戦略を立てていかなければなりません。初年度についてはある程度のADR を確保できるようにトライしていきたいと思います。いずれにしても東京全体の価格が上昇傾向にありますので、ADR についても上げ気味で打ち出していけるのではないかという感触を、今のところは持つことができています。
米国でブランドが発祥してから、ハイアット セントリックはシンプルなサービスの形を追求してきました。そのため対オーナーの立場では、高いGOP をプレゼンテーションできるブランドであるという面を併せ持っていることになります。
ホテルのサービスを考えたとき、例えば今のご時世で100 人のゲストが100人とも新聞を希望しているでしょうか。真夜中のルームサービスは果たして1 日に何件入るでしょう。ハイアット セントリック 銀座 東京では、新聞のお届けはご希望されるゲストのみ、ルームサービスは23 時で終了します。
このようなサービスと4 万円前後というADR を秤にかけて、「価格に見合わない」というイメージを持たれて帰られるゲストも当然いらっしゃると思います。カジュアルな雰囲気、シンプルなサービスと客室単価のレートとのバランスに関するマーケットの反応に対して、ブランドの真意を崩すことなくどの辺りまでアジャストできるのかは、一つのポイントになってくるでしょう。
また、ハイアットメンバーのゲストにしても、米国にある同一のブランドがアジアに上陸するとアップスケールするという意識を持っていらっしゃいます。「東京の銀座にできたハイアット セントリックなのだから、何かしら米国とは違ったサービスを提供してくれるだろう」という高い期待値を持って訪れる中で、個別の捉え方は何十通りも存在するわけです。
そうした背景がありながら、ローカルの需要に合わせてアジャストして、レートの価値をきちんと認識していただけるような設定をしていくことが求められてくると考えています。
将来的にハイアット セントリックは
アジア地域に展開予定
❐ ハイアット セントリック 銀座 東京は、これからどのようなホテルを目指していきますか。
ハイアット セントリック 銀座 東京の最大の売りとなるのは、やはり「私たちだからこそ提案できる銀座の楽しみ方」にあると思います。ホテルで働くすべてのスタッフが「私だからこそ紹介できる銀座を持とう」という意気込みで、自分なりの武器をたくさんそろえて、最善のタイミングとコンディションでゲストにご案内していくことが重要なのです。
ライフスタイルホテルを好むゲストは、どちらかと言うとさらりとしたサービスを求めている傾向が強いと感じています。そのことを突き詰めてみれば、「テクノロジーとヒューマンタッチの快適な融合」に行き着くのだと考えています。シンプルでさらりとしたサービスを提供するホテルに見えるけれども、実はスタッフ一人一人が、ゲスト一人一人をしっかりと見つめている。そしてその人に最適なサービスを個別に提供していく。
スタッフが個人としてゲストに接していく、そんなサービスを続けていくことのできるホテルを目指していきたいと思います。
❐ 5 年後、10 年後を見据えたビジョンの中で、期待や不安はありますか。
これは私の持論ですが、これからの時代はハイアット セントリックのようなブランドのライフスタイルホテルが、ローカルのマーケットにおいてより受け入れられていくと見ています。20 代から60 代まで、ものすごく幅広い年齢層の方々に好まれることで、リピーターによってホテルが成熟するステージに入っていくだろうという期待を抱いています。
細かいところまで手が届く、いわゆる日本のおもてなしによるサービスは、それはそれで重要です。ただ、5年後、10 年後のローカルマーケットを見据えた場合には、ライフスタイルホテルの需要は確実に拡大していると予測しているのです。
誰もが気負わずに利用できて、気がついたらさりげなく自分に合ったサービスが受けられていたという印象を、与えることのできるホテルが増えていかなければならないと思っています。、時代のニーズに対応していくために、ハイアットのみならずほかのグローバルチェーンもライフスタイルホテルの展開を日本を含むアジアにおいても今後強化していくことになるでしょう。
将来にわたって、ハイアット セントリックのブランドを冠したホテルは、アジア地域で展開していくと思います。その動きの中でブランド認知がますます広がっていけば、ハイアット セントリック 銀座東京にとってもさらなる追い風が吹くことになるはずです。
そして今、アジアで最初のハイアットセントリックのブランドビルダーとしての役割を、私たちハイアット セントリック銀座 東京が担わせていただいていることに対してとても光栄に感じています。
トップインタビュー ハイアット セントリック 銀座 総支配人 内山 渡教 氏
テクノロジーとヒューマンタッチの快適な融合でゲストとパーソナルにつながっていく
【月刊HOTERES 2018年04月号】
2018年04月27日(金)