南フランス ニース名家出身で、パリ育ちのジャン・メデゥサン氏が、独自の体験と家族エピソードを交えた料理に関する書籍を発表する。本誌では、2018 年4 月からメドゥサン氏のニース料理レシピをエピソードとともに連載で紹介していく。
ジャン・メデゥサン
Jean Medecin
〈Profile〉1971 年フランス パリ生まれ。父はオペラビジネスの実業家、母はオペラ歌手。南仏ニースのジャン・メデゥサン通りはかつて同市長であった祖父の名に由来。叔父ジャック・メデゥサン氏は料理本を執筆し世界的ベストセラー。食文化や料理を愛する過程環境に育ち、幼少期よりたびたび家族とともにニース料理に親しむ。金融ビジネスを手掛けるかたわら料理本を執筆。
Instagram |NICE_MEDECIN
私が日本にフランス人の友人と一緒に初めて旅行したのは今から13 年前、2004 年の秋のことでした。当時、日本にはなんとなく興味を持っていただけでしたが、後に、日本は私の人生にとって重要な位置を占める国となったのです。 フランス人の友人たちは私を喜ばせようと、日本人のご夫婦と一緒に銀座の有名なすし屋さんでの食事会をアレンジしてくれました。そこで私は本物のすし屋さんを初体験したのです。上質の繊細な味の魚、すし飯の洗練された風味と香り、そしてほかに比類のない素晴らしいサービス。実はこのすし屋での食事会は危うく実現されないところでした。当日、日本人ご夫婦のだんな様が病気になってしまったのです。ところが、私をがっかりさせてはいけないと、彼は友人に妻と一緒にすし屋に行くこと、そして私をホテルに迎えに行くことを頼んでくれました。