老舗製粉所のこだわりは
粒の在来種にあり
寺尾製粉所さんは姫路で創業されて120 年ですか。
はい。明治24 年の創業です。出発は穀物全般の加工(米穀、きな粉、穀茶)です。そば製粉は、近年の健康志向により需要が増えつつあります。そば専門店に意向をうかがい、仕入産地も地元はもとより、お店の好みに合わせて十種類以上を取り扱っています。とりわけ、色、香り、凝縮された味など環境にこだわり伊吹山麓で収穫された伊吹産そばが人気です。そば屋さんに尋ねると、特に味が凝縮されて美味しいのは「小粒の在来そば」と言われます。他店との差別化を図りたいと思っているそば屋さんは、より味の濃い物、小粒のそばを求めます。在来種しか使わないというこだわりのそば屋さんもあり、伊吹在来そばのファンも年々増えています。
生産者の精力的な取り組みと栽培
技術、管理体制が取扱いの決め手
小粒で味や香りが良いから伊吹在来そばを取り扱うようになったのですか。
日本そばの発祥は諸説ありますが、伊吹山もその一つとされ、加工業者としてロマンを感じます。でも、そればかりではありません。取り扱いたいと思ったのは、生産者の方がとても精力的に取り組んでおられるからです。幾度と生産現場にもうかがいましたが、徹底した管理の下で作られています。生産者の思いがそばにも宿るんですね。
伊吹在来そばは熟成にも向いている
そばは天候に大きく左右されるのですね。
湿害に弱いそばは雨の多い年は不作になりがちです。特に昨年は全国的に台風や長雨の影響でそば生産地は不作でした。私どもは一昨年の伊吹産を寝かせて、低温保管で、熟成させています。
完熟している方が良いと、あえて昨年のものを使うお店もあります。そばはお店がどんなそばを提供したいかで選ばれます。そば屋さんごとに自家製粉したり、そば粉をお店でブレンドしたり、こだわりがあります。一口に「そば」と言っても、面白みや見えない奥深さがあるのです。
そばの食べ方や健康など、広がる
そばの可能性
面白みと言えば、同じ粉でも全く違うそばになるとか。
そうです。同じ粉でも練り方や練る回数によって麺の歯切れ(破断率)も変わります。現在、大学と連携して、喉越しや噛み応えを数値化する研究をしています。大学からはそばの食べ方や健康面についてのアドバイスもいただいています。「健康志向」「メディアの影響」など、さまざまな外的要因が働いてそばの可能性が広がりつつある中、伊吹在来そばも素晴らしい取り組みをされているので、これからも末永くお付き合いさせていただきたい、伊吹在来そばが広がるように切磋琢磨したいと思っています。
第4週
集中連載 伊吹在来そばに魅せられて 第4週「プロ目線 / 製粉所&そば屋」(関西)
そばの魅力を引き出す 伊吹在来種の味、香り、生産者の 厳格な品質管理
【月刊HOTERES 2018年02月号】
2018年02月23日(金)
豊かな自然の中に、伝統ある製粉所の工場は位置している
㈱寺尾製粉所 常務取締役 寺尾 文孝氏