山陰地方の東側に位置する鳥取県。人口は約56 万5000 人と少なく、広さも全国47都道府県で7 番目に小さい。しかしながら松葉ガニなど境港からあがる魚介類やらっきょう、白ネギ、二十世紀梨、鳥取和牛など豊富な食材に恵まれている。観光地として鳥取砂丘や「ゲゲゲの鬼太郎」を描いた漫画家・水木しげる氏の記念館など全国各地から訪れている。県政としても生産物のブランド化にも努めるなど、新たな一歩を踏み出している。その中で地産地消にこだわり腕を振るっている総料理長がいる。それがホテルモナーク鳥取の阿部康弘氏だ。
ホテルモナーク鳥取 総料理長(和食料理長)
阿部 康弘 氏
辻調理師専門学校卒業。㈱相生楼(4 年間勤務)、㈱ワールド「利楽心」(7 年間勤務、料理長5 年間)、㈱マルシェ「楽待庵」(新規オープン1 年間、料理長)、京都ハイアットリージェンシー「東山」(新規オープン2 年間勤務)を経て、2010(平成22)年9 月よりホテルモナーク鳥取 総料理長(和食料理長)に就任、現在に至る。
アスパラガス・白葱生産者 岸本 吉人 氏
うしぶせファーム 岸本 真広 氏
鳥取県漁業協同組合 漁政指導課 主任 小倉 一浩 氏
鳥取県椎茸生産組合連合会会長 鳥取いなば農協青谷支店椎茸生産部長 長谷川 和郎 氏
❏ 総料理長は地産地消にこだわり腕を振るっていらっしゃるとお聞きしました。地産地消にこだわっている思いをお聞かせください。
阿部 当ホテルの魅力の1 つに「記憶に残る、料理」を掲げています。記憶に残るということはご満足いただくことです。そのために鳥取ならではの旬の新鮮な魚介類や牛肉、野菜などをふんだんに使用するとともに、四季折々にメニューを変え、いつお越しになってもちがう味わいを楽しんでいただけますよう厨房スタッフで研鑽を重ねております。期間限定の宿泊プランも企画し、のど黒や県産きのこ、県産牛ヒレ肉や野菜のグリルなど、食材一つ一つこだわり抜いた逸品をご提供しています。鳥取県産物として全国的に松葉ガニやのど黒、剣先イカなど、境港から水揚げされる魚介類が知られていますが、魚介類以外にもらっきょうや白ネギ、アスパラガス、梨など野菜や果物も豊富にあり、恵まれた生産物を生かした料理を食していただくことで、もっと鳥取県の魅力を感じていただければと思います。私自身は鳥取に来る前は関西の料理店やホテルで勤めていましたので、想像以上に鳥取の境港で水揚げされた魚介類が豊富で鮮度が高いことに驚いた次第です。
❏ ほかにどのような鮮魚があるのですか
小倉 鳥取の鮮魚は豊富です。とっとり松葉ガニのトップブランドである「五いつきぼし輝星」は初競りで1 枚130 万円の価格となり全国でも最高値となりました。トップブランドを獲得できるのは全体の0.1%未満という稀少価値があります。大きさは甲幅13.5センチ以上、重さ1.2㎏以上(重量は市場での販売時点に生で計測)、形状は脚がすべてそろっているもので、鮮やかな色合い、身が詰まっていることなど厳しい基準をクリアしたものだけに与えられるブランドです。そのほか、はまちやカレイ、シロハタ、さわらなどもあります。また地元でしか味わえない幻の逸品として「モサエビ」もあります。クロザコエビのことを地元ではそのように称しているのですが、9 月~ 5 月まで漁獲されます。弾力がある食感や旨味が強く、旨味は甘えび以上ですが鮮度劣化が早いため遠隔地へ出荷は難しく、地元でしか味わえない幻のエビです。旬の新鮮な鮮魚を使った料理をホテルで提供していただける機会が増えることにより、鳥取の鮮魚の希少価値や魅力を感じていただけることは大変有難いことだと思っています。