クオリティ・サービス・コンサルタント
桧垣 真理子氏
Mariko Higaki
〈Profile〉大阪府出身、関西学院大学文学部英文科卒業。田崎真珠にて勤務後、ホテル業界に転職。大阪ヒルトンでゲストリレーションズやトレーニングマネージャーを経験後、リッツ・カールトンへ入社。大阪、東京の開業から携わり、クオリティ担当部長、人材開発部長としてホテルのサービスの根幹を担う。在籍時は同社アメリカ本社「ザ・リッツ・カールトン・リーダーシップセンター」認定スピーカーも兼務。2011 年クオリティ・サービス・コンサルタントとして独立し、独自のクオリティ手法を用いて、サービスを向上させるコンサルティングをさまざまな業種(ホテル旅館、レストラン、スパ、病院、保育、銀行等)で行なっている。
現在クオリティ・サービス・コンサルタントとして、多業種のクライアントとのサービスの質を高めるコンサルティングをしている桧垣氏が日々大切にしていることをテーマに、全12 回の連載で「サービスプロフェッショナル10 カ条」についてお伝えしていきます。今回はピンチのとき、いかにプロの力を発揮するか、から始めましょう。
⃝桧垣真理子氏の「サービスプロフェッショナル10カ条」
① この仕事が好き! が原点。好きなところを見つけ、全力でやる
② この仕事だからこそ、経験、出会いに感謝する
③ あたり前のひと言を大切に
「こんにちは」「ありがとうございます」「お先にどうぞ」「恐れ入ります」
④ お客様、仲間への想いと仕組み、どちらも大切
⑤ ピンチはチャンス、プロの力を発揮する(NO と言うのは難しい)
⑥ 共に喜び、悩み、助け合える仲間を持つ
⑦ 学び、成長し続ける〜学び、実践、学び、また実践
⑧ よいお客様であること〜感謝と敬意、困った時にはきちんと伝える
⑨ あきらめないこと〜できると思えばできる
⑩ 大きな目標と小さな目標を持つ
サービスプロフェッショナル第5 条
「ピンチはチャンス、プロの力を発揮する(NO と言うのは難しい)」
お客さまお困りの事態発生時、皆さんはどんな気持ちになりますか? 私の場合、申し訳ない気持ちと共に、問題解決と信頼回復へのファイトが湧いてくるのです。「起こった問題は、PROBLEM ではなく、OPPORTUNITY(チャンス)」という言葉に初めて出会ったとき、なるほど!と納得しました。問題発生はマイナスからのスタート、問題解決でゼロ、対応の仕方によりプラスにできるチャンスです。とはいえ、大激怒のお客さまに対応するのは、気が重い、勇気がいることでもあります。まずは、こちらが心を開き、お客さまに「この人に話したい、聴いてくれそう」と思っていただくことから。問題解決プロセスは傾聴から、と言いますが、聴いているつもりで、やたら頷くことや、「きっとこう思っている」「解決策は分かっている」という気持ちは、態度に表れ、不信感を招きます。心を開き、よく聴くと、ごもっともなことがいろいろあります。例えば、お客さまがホテルやレストランに到着し、予約をしたはずがない! すでに満室、満席としましょう。そのとき、スタッフの第一声が「お客さま、いつ、どのように予約されましたか?」という事実確認ならどう感じるでしょうか? お客さまには、ホテルやレストランにお越しになる理由があり、予約がないのは実際困りますね。自分がお客さまだったら、という普通の感覚を仕事になると忘れがちです。この普通の感覚が大切と思います。
ホテリエ経験を通して「お客さまの言葉や態度の背景を理解しようとすること」も教わりました。ご要望通りの対応ができず、丁寧にお詫びし、代替案を提示したところ、お客さまがホテルを出てゆかれた苦い経験もあります。その後、よくお話を伺い、自分の理解が足りなかったことを痛感しました。お客さまのご要望をお好みやこだわりとしてとらえるだけでなく、ビジネスや生活習慣等、背景にある理由を理解しようとすることは、今の仕事でも大切にしています。