今回からは少し視点を変えてウエディングをホテルにおけるBtoCビジネスの一つと考え、「ウエディングに強いホテルはホテルとしても強い」と題し、ブランディング、組織力という2 つの観点からなぜウエディングに強いホテルはホテルとしての強いのかについて検証していきたいと思います。今回はブランディングについて検証してみましょう。
ホテルの事業の顧客群を整理すると大きく3つの顧客群に分類されます。第一顧客群は宿泊を中心とした遠隔個人顧客です。こちらはビジネスや観光を目的とした個人顧客群になります。この中にはもちろんインバウンド層も含まれます。第二顧客群は法人顧客。こちらは同じく団体やツアーなどを含む宿泊や会議、宴会などを目的としたMICE 分野の顧客群です。そして第三顧客群は近隣地域に住む個人顧客になります。こちらは宿泊もありますが、主にはレストランの利用やウエディングパーティの利用を目的とした顧客群です。ホテルは大きくこの3 顧客群の利用による収益で構成されています。
第一顧客群に関しては訪日観光客の増加、第二顧客群に関しては法人の収益力アップなどによる外部環境のプラス要因により、比較的順調に推移しているホテルが多いと思います。しかし第三顧客群に関してはいかがでしょうか? ウエディング顧客はここに含まれるのですが、この顧客群の特徴は地元層である点です。ここ最近オープンするホテルを見ると、残念ながらこの地元層に対しての価値提供の優先順位が極めて低くなっているように感じます。バンケットを持たず、レストランは宿泊者に対応するための最小限レベルにするのが標準になってきています。日本の総合ホテルの多くはそのエリアや再開発の象徴として、地域に住む人たちの誇りとなり愛されるホテルとして誕生してきた背景があるはずです。
しかし10 年、20 年と年月を重ねていく中でマーケット環境は変化し気がつけば地元層に対してのブランド価値が薄れ、近隣地域に居住する個人顧客つまり地元層にとってホテルは身近ではなくなってきているのかもしれません。このような状況も影響しホテルにおけるウエディング需要の減少にもつながっている可能性が高いと考えます。ホテルがウエディングマーケットに対して急にブランディングを始め、アプローチをしようとしてもそれでは遅過ぎるのです。ブランディングは普段のレストランなどの利用によって身近でありかつ想い出の場所にしていくことで、ウエディングの対象になったときに最優先の会場候補になるのです。
第一、第二顧客群に強いだけでなく第三顧客群にも強いホテルが本当に強いホテルなのではないでしょうか。つまり第三顧客群に対するビジネスである「ウエディングに強いホテルはホテルとしても強い」という理屈が成り立つのです。そして大切なことは地元に愛されるホテルつまりいつも地元を大切にしているホテルがウエディングを含む第三顧客群に支持されるのだと思います。いまだからこそ原点に返り地元層へのブランディングが重要なのです。次号では「ウエディングにつながる将来顧客の囲い込み」についてお伝えします。
第27 回
いよいよ到来! ホテルウエディング復活のとき! カスタマーニーズを先取りし、ホテルの強みをフルに活かしてお客様の心をつかむ!
第27 回 「ウエディングに強いホテルはホテルとしても強い」
【月刊HOTERES 2017年11月号】
2017年11月10日(金)