さまざまな料理人がいる中で、一人一人が持つ苦悩と挑戦の数々の物語がある。ホテル・レストランの総料理長が食の業界や若手の料理人に向けて伝えたいことは何か。これまでの長い経験の中で、どのようなことに悩み、どのようなことを考え、どのようにチームを創り上げてきたのか。インタビューを通じて後継者育成に向けた取り組み、マネージメント手法などを探るシリーズ「料理人の教育論」を隔週連載でお届けする。
浦和ロイヤルパインズホテル 副総支配人 総料理長 中宇祢 満也氏
ほかのホテルの料理人と肩を並べれば
自分のレベルの位置付けが分かる
—中宇祢さんは若いころに総料理長に任命されています。
私が総料理長に就任させていただいたのは、39 歳のときでした。先輩方もたくさんいらっしゃいましたので、相当なプレッシャーも感じましたし、厳しい面もありましたが、それ以上に仕事の面白みを感じることの方が多かったですね。就任以来、あっという間に10 数年たってしまったというのが実感です。
ほかのホテルの料理人と肩を並べれば
自分のレベルの位置付けが分かる
—中宇祢さんは若いころに総料理長に任命されています。
私が総料理長に就任させていただいたのは、39 歳のときでした。先輩方もたくさんいらっしゃいましたので、相当なプレッシャーも感じましたし、厳しい面もありましたが、それ以上に仕事の面白みを感じることの方が多かったですね。就任以来、あっという間に10 数年たってしまったというのが実感です。
毎年、新しい人たちがどんどん入ってきますから、マネージメントする私たちとしては今の時代に合わせて仕事や指導のやり方を常にアップデートしていく必要があると思っています。若い人たちの未熟さを批判するのは簡単ですが、彼らは今の時代環境の中で育ってきたわけで、経験を持つ私たちの側が新しい時代の形に順応していくことが大切だと考えています。
—今の時代の若いスタッフに共通して見られる特徴として、どのようなことが挙げられますか。
若い人たちの中には、自分の目標を立てて取り組んでいる人もいますし、1日を何事もなく終わらせようとする人もいます。それは人それぞれです。その上で共通点をあえて挙げるとすれば、例えば「もっと高い給料がもらえるようになりたい」といった昔のようなハングリー精神は薄れて、「もっと自分の時間が欲しい」という要望が強くなっています。私は若いころ、「フランス料理をどうしてもやってみたい」と思っていました。当時の自分にとってまったくの未知の世界でしたが、フランス料理を仕事にした上で「ホテルの料理長になりたい」と強く望んでいたのです。その意志を持ち続けることで、先輩たちから厳しい指導を受けながらも、負けずに頑張ることができました。
そういった類の貪欲さは、昔に比べると失われてきたように感じます。ただしそういった時代性においても、自分自身でものすごく考えて日々仕事に取り組む若者がいることも確かです。