一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ 創造支援研究所 理事長 森田 司
森田 司
Morita Tsukasa
一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ
創造支援研究所 理事長
〈Profile〉1968 年生まれ。企業の労務管理全般のコンサルタント、講師、カウンセラー、コーチ、メンターメンタルヘルス対策、ハラスメント対策、採用支援、育成支援、教育評価処遇制度設計・運用に実績。一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ創造支援研究所として、500 法人2000 事業場以上の労務管理支援実績あり。本誌での過去の連載は「ブラック企業ではなく「優良企業」と認定されるための手引」。厚労省(独)労働者健康福祉機構 勤労者医療&産業保健 外部研究者。厚労省 東京労働基準局三鷹労働基準監督署「健康職場づくりプロジェクト」外部研究者。厚労省 東京労災病院「がんの両立支援プロジェクト」アドバイザー。労省(独)労働者健康安全機構 元外部研究者。厚労省東京労災病院 両立支援事業 元アドバイザー。
問い合わせ info@qol-souken.org
一般社団法人クオリティ・オブ・ライフ創造支援研究所の森田です。本連載では、ハイパフォーマーの定義を「生産性の高い労務を安定的継続的(企業の事業計画に則して)に提供できる従業員、特に若者(35 歳以下)や女性」としています。本号では『ホテルレストラン業界がハイパフォーマーを活用するには人事制度の大きな改革が必要である』ということをお話ししたいと思います。
はじめに、1 月号から4 月号の4 回にわたりハイパフォーマーたちの採用と離職防止に重要な最新の労働関連法制度への対応をお話ししたことを思い出してください。簡単に振り返りますと、育児介護休業法(育児介護休業制度利用における不利益取扱防止とマタハラ・パタハラの禁止など)、男女雇用機会均等法(性別による雇用条件差別の禁止、セクハラ禁止、性的少数派差別の禁止など)、女性活躍推進法(採用比率の偏り是正や女性管理職登用の促進、ワーク・ライフ・バランスの推進など)、若者雇用促進法(労働関連法制度違反企業の求人不受理、過重労働防止対策の促進、指導育成制度の導入によるキャリアアップ支援の推進など)、に対応しなければ、2018 年問題や東京オリンピック問題を抱える今、若者や女性たちを安定的に確保することは極めて困難である、というお話をしてきましたね。しかし、ホテルレストラン業界は2018 年問題や東京オリンピック問題とは異なる根本的な問題を抱えているために、それらを改善、解消、克服しない限り、コンプライアンスを推進しただけでは、ハイパフォーマーによる経営改善を実現できないと私は思うのです。
ホテルレストラン業界が抱える根本的な問題とは、報酬、中でも〈経済的報酬〉に関する問題です。平成26 年度国税庁発表の資料『第2 表給与所得者数・給与額・源泉徴収義務者数 その2 業種別・事業所規模別 平均給与)』を掲載しましたのでご覧ください。
宿泊業・飲食サービス業の平均給与は最下位であることが確認できます。ここで比較してみたいのが医療・福祉業界です。医療、福祉業界、特に介護や保育に従事する労働者の経済的報酬が低いことが原因で介護従事者や保育士等の福祉スタッフを育成することや一定数の労働力を確保することができない、そのために待機している高齢者、要介護者、要支援者およびそのご家族や児童およびその保護者たちが介護や保育のサービスを利用できない状況は社会的な問題であるとしてメディアも大きく取り上げています。政府や行政機関も福祉スタッフの経済的報酬の是正に向けた施策に注力しており、助成金や補助金を投じる政策論争は今や選挙戦略の重要キーワードになっているくらいです。