株式会社ウエイクアップ
ラーニング事業本部チーフディレクター
柴原陽子
〈プロフィール〉大阪生まれ。1986 年ヒルトン大阪の開業時に入社し、人事部長付秘書を経てトレーニングマネージャーとして教育全般に携わる。2000 年のユニバーサル・スタジオ・ジャパン® の開業時には、教育研修担当として入社し05 年パーク全体のゲストサービス統括として初代ゲストサービス・クオリティー・マネージャーとなる。就任中はゲストサービスにおいてパーク全体で様々な施策を展開してきた実績をもつ。人材育成コンサルタントとして独立後は、伊豆熱川温泉旅館の「女将」経験も活かしながら、ホテル・旅館を主としたホスピタリティ産業企業を中心にコーチング手法を取り入れた教育と企業の発展にむけた組織改革を行っている。また、「コーチング」を02 年より学び始め、現在は㈱ウエイクアップと契約し、コーアクティブ・コーチング® のプロフェッショナルコースのトレーナー兼同社ラーニング事業本部チーフディレクターとしてコーチ育成事業に携わることで広く社会に広める活動もしている。
「コーアクティブ・コーチング®」は株式会社ウエイクアップ CTI ジャパンの登録商標です。より詳しくお知りになりたい方は、CTI ジャパンのホームページをご覧ください。
http://www.thecoaches.co.jp/」
コーアクティブ・コーチング®〈4 つの礎〉
① 人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である
② 今この瞬間から創る
③ その人すべてに焦点を当てる
④ 本質的な変化を呼び起こす (別表)
前回は、可能性を阻む要素の一つである「サボタージュ」という思考の存在について述べていきましたが、今回はもう一つの要素、「視点」についてです。今回より2 回に分けてお話していきます。
「視点」
一般的な言葉ですが、改めて「視点」という言葉の意味を調べると、「視線の注がれるところ」「物事を見たり考えたりする立場。観点」「ものの見方」とあります。皆さんはどのような場面でこの「視点」を活用されているでしょうか。あまりに日常的過ぎて答えが出てこないかもしれませんが、恐らくさまざまな問題に直面したときに解決していく一つのマネジメントスキルとして使われているのではないでしょうか。「いろいろな視点から考えてみよう」とか、「違う視点に変換してみたらどうだろう」等々。具体的な例として、部下に対してアドバイスをするときに、「今の状況を短期的にしかとらえていないようだが、長期的に考えてみるとどうだろう?(時間軸での視点変換)」とか、サービス業であれば「オペレーションサイドからしか考えていないように感じるが、お客さまの立場に立ってみて考えることも大事だよ(役割軸での視点変換)」等が、「視点」を活用した例です。つまり、今の「状況、状態」を現在どのような「視点」で見ているのかを指摘し、その「視点」から考えると(その見方をしていると)どのような解決策やアイデアが思い浮かぶのか、そして最終的にそのいろいろな「視点」から現段階における最善の「視点」を選択して行動を決定していく、という思考のステップです。マネジメント研修でも、問題解決していく方法の一つとしてよくこの「視点変換」についてお伝えすることがあります。
視点の落とし穴
前述したように、前号でお伝えした「サボタージュ」と同様、「視点」についても、そもそも、今どのような「視点」で物事を見ているのか、自分一人ではなかなか気付かない場合が多いのです。これをコーアクティブ・コーチング® では「視点にはまる、ある視点に陥っている」と表現しています。そのときの分かりやすい症状としては、「行き詰まり感」「にっちもさっちもいかない」「こうするしかない」という状態です。一つの視点からしか物事を見られなくなっているときは、この「状況や状態」ではもう打つ手がない、この方法しかない、というとても狭く、力の出ない行動を選択してしまいます。これを繰り返していると、自分で何かを選択しているというより、状況や環境に左右され過ぎ、当然生き生き感ややりがいが感じられないでしょう。「状況や状態」をしっかりつかむことは大切ですが、その現実を「どうとらえるのか、どう見るのか」は自分次第である、ということなのです。