ホテルブランドが多様化する中、ブティックホテルというカテゴリーが世界で確立されて久しい。日本でも2014年に開業をしたアンダーズ東京を皮切りにようやくそのトレンドが及びつつあるが、一方世界では増加するブティック・ホテルのM&Aなどトレンドはさらにその先を行っている。
本連載ではトレンドの最先端を行く米国やニューヨークのホテルブランド動向について、コーネル大学において修士号を取得後、ホテル投資アドバイザリー企業でのインターンを経てホテル運営企業での開発経験を持つNY在住の吉田直子氏に紹介をしていただく。
ニューヨークでは有名シェフの地位が高く、彼らのブランドで運営するレストランを持つホテルが多く見られます。多くのレストランは賃貸方式=ホテルがスペースをレストランに賃貸し、レストランは賃料+αをホテルに支払う方式が見られ、これにはニューヨークならではの理由があります。また、ホテルでのレストラン開発・運営が得意なシェフもいて、コラボレーションによってホテルをホテルだけに留まらないディスティネーションにしています。
写真提供:Bullfrog+BAUM
ホテル内のセレブリティシェフ・レストランの
ニューヨークでの位置付け
マンハッタンのブティックホテルが競争に勝つには、常に、カッティングエッジで、かつ、“次に来るトレンド感”を持っているかが重要になります。トレンディなデスティネーションレストランがホテル内にある事によってブティックホテルが他のホテルより際立ち、要求の高い顧客がリピーターになり、高収益体質に変わります。
ニューヨークの有名シェフのレストランのある主なブティックホテル
有名レストランへの賃貸方式によるホテル運営
マンハッタンのホテルは直営レストラン単体で売上を黒字化するのは難しく、有名レストランへ賃貸することによってコラボレーションして成功している例が多くあります。
しかし、この方式が上手くいくのは、アメリカでは主にニューヨークとサンフランシスコのみであり、主な理由は下記になります。
*労働組合の強いニューヨークでホテルが成功する為の最大の障壁は労働コストである。とくにF&Bに一番コストがかかる。F&Bを賃貸にすることでホテル側は負担を減らすことが出来る。
*ニューヨークとサンフランシスコのみが有名シェフによるレストランが成功する土壌がある。この2つの地域は金融、ITビジネス、グローバルカンパニーの本社が集中する地域であり、有名シェフのレストランにコストをかける層が厚いからである。
また、レストラン側から見たホテルへの出店のメリット・デメリットは、以下のようになります。
*ブティックホテルやラグジュアリーホテルとコラボレートすることで、ホテルの上質な顧客を得ることが出来る。
*ホテルのサービススタンダードに合わせる必要があり、ルームサービスへの24時間対応など、通常のオペレーションとは異なった運営が必要。
*ホテルの要求するクオリティに合わせる為に、質の高い従業員を雇ったり、教育する手間が掛かる。
L’AMICO×Kimpton Hotel
写真提供:Bullfrog+BAUM
写真提供:Bullfrog+BAUM
今回は、ニューヨークを拠点にし、米国、香港、日本、カザフスタンへ展開するBLT global restaurant groupにグループ直営のイタリアンレストランL’AMICO写真を提供してもらいました。L’AMICOはブティックホテルチェーンのKimpton Hotel Eventi内にあります。
マンハッタンの中心地タイムズスクエアからほど近い場所にあり、約800平米のレストランとイベントスペースにガラス張りのダイニングホールと室内テント、ピザ釜を備えたデザインで、ミーティング・コンベンションにフォーカスするKimpton Hotel Eventiの設計とマッチするレストランコンセプト・デザインとなっています。
L’AMICOを運営するBLTは創業者かつシェフであるLaurent Tourondel氏の“Bistro Laurent Tourondel”の略称です。彼の強みはレストランブランド・コンセプト開発・運営で、BLT Steak, BLT Prime国内外で、The Ritz Carlton, JW Marriott, Trump International Hotelなどのインターナショナルホテルブランドで数多くの実績を持ちます。
- 吉田 直子 プロフィール