㈱ロイヤルパーク ホテルマネジメント ロイヤルパークホテル ザ 汐留 常務取締役総支配人 雄城 隆史 氏
グローバルな経験と視野
後継者を語る前にまず10 年先を想像してみましょう。 東京オリンピック・パラリンピック開催から早6 年が経ち、ホスピタリティー産業はどう成長しているのでしょうか。日本はさらにグローバル化し、政府が目標とする2030 年、訪日外国人6000 万人に限りなく近付いていることと思います。この訪日外国人観光客の増加に伴い、日本への注目度は高まり、外資系企業の日本への進出は加速し、日本企業の買収が繰り返され、ホテルもその波を受けていると考えます。企業の従業員は多国籍となり、ホテルにもさまざまな国籍の総支配人が誕生していることでしょう。
さらに、未来を想像するときに見過ごせないのがAI(人工知能)の進歩です。その研究者である英オックスフォード大学、マイケル・A・オズボーン准教授らの論文では「技術の進歩がめざましい機械化によって、人間の仕事がどのくらい奪われてしまうのか」ということが分析されています。その論文によると、今後10年~ 20 年ほどで約47%の仕事が自動化される可能性が高いと結論付けられています。ホテル業界に照らし合わせてみると「ホテルの受付」や「電話オペレーター」が90%以上の確率で消える仕事のリストに挙がっています。AI は人間の仕事を奪ってしまう悪因のように感じられますが、人間でなければできない仕事と効率化した方がいい仕事をしっかり棲み分けし、今後のビジネス環境の変化に対応していかなければいけないでしょう。
では、このようにグローバル化された社会の中で、果たしてどのくらいの日本人が総支配人として存在しているでしょうか。トップの座に就くためには、学生時代から世界を「見て・知り・身を投じる」ことが必要だと思います。しかしながら日本からの留学生数は減少の一途を辿っています。これでは日本人はグローバル化に乗り遅れてしまいます。人に使われる立場になるのか、あるいは奮起してトップの座を志す日本人が出てくるのかが、これからの日本の行方を左右すると考えます。世界に出て行かない若者を「内向き」と非難しているわけではありません。私は国や企業が彼らの意欲と可能性をバックアップする体制を整えるべきだとも感じています。
また、機械化が進む中で必要とされる資質とは何か。それは、顧客との間にプロとして友好的な関係を確立できる力があり、このような仕事に楽しみや喜びを覚える人です。もちろん、収益を最大化するためのホテル戦略にも精通している必要もあります。しかし、これらは決して個人プレーに走るのではなく、チームの一員として貢献する資質も求められます。 先を見越して打開策・解決策を見つけ出すためにテクノロジー(AI)とデータを活用できることも重要であると考えます。 グローバルな経験と視野を持ち、必要とされる資質を持つ人物像をデザインすることは総支配人の大切な役割であると考えます。日本経済や産業は日本人によってリードされている10 年先を私は期待しています。
ロイヤルパークホテル ザ 汐留
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