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第235 回 新しい視点 「ホテルの価値」向上理論 〜ホテルのシステム思考〜

第235 回『インバウンド市場と容積緩和規定』

【月刊HOTERES 2016年09月号】
2016年09月23日(金)
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北村剛史
Takeshi Kitamura
㈱ホテル格付研究所 代表取締役所長
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士、MAI( 米国不動産鑑定士 )
MRICS(英国王室認定チャータードサーベイヤーズ)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。ホテル・旅館の不動産鑑定評価会社である㈱日本ホテルアプレイザルの取締役。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では「ホテル・旅館の人格性、パーソナリティー」をテーマに研究活動に従事

 
 政府による2020 年目標外国人観光客数が見直され2000万人から4000 万人となりました。さらに東京オリンピック・パラリンピック後の30 年には6000 万人とし、20 年の訪日客消費額では15 年の2 倍に相当する8 兆円を掲げています。その対応策では、「観光資源の魅力向上(迎賓館等公共施設の開放、文化財整備、景観計画策定等)」、「観光産業の国際競争力強化(民泊、誘致活動、中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアを対象としたビザ緩和等)」のほか「快適性に観光できる環境整備(クレジットカード普及、地方空港の民営化等)」が進められる予定です。

 まず、当該計画通りに外国人観光客市場が拡大した場合の市場インパクトをシミュレーションしてみます。前提としては、その平均滞在日数を6 泊とし、うち2.5 泊を東京都、その他地方都市に3.5 泊を想定します。東京都には全体の45%、その他地方都市には全体の55%が滞在し、すべての同伴係数を2.0 人/ 室とします。客室数(ホテル・旅館のみ)は、地方都市で140 万759 室、東京都で14 万3848 室(平成26 年衛生行政報告例より)とし、その後の客室増減は考慮外とします。民泊については、前提として1 万室で安定推移、特区民泊等を考慮外とし、営業日数を180 日とします。また当該民泊は外国人のみが利用するものと想定します。東京都から見てみますと、仮に2020 年に訪日外国人観光客数が4000 万人に到達するものと想定した場合に、そのうち45%が東京都に平均2. 5泊宿泊し、同伴係数が2.0 人/室とすれば、年間で延べ必要客室数は2250 万室となり、1 日換算で6 万1644 室となります。

 現状の客室供給数が14 万3848 室で固定とすれば、想定される平均インバウンド比率は42.9%となります。同様の計算で30 年に政府目標通り6000 万人に到達するとすれば、想定される平均インバウンド比率は64.3%ということになります。ここで仮に民泊がほぼ現状の推定約1 万室のまま推移すると仮に想定し、そのすべてが外国人向けに稼働するものとし、2.0 人/室の規模で利用されると考えると、民泊市場控除後のインバウンド比率は2020 年で39.4%、30 年には60.9%となります(ホテル旅館業界に与える影響は平均インバウンド比率で△ 3.4%)。多くの前提を設けており、あくまで参考シミュレーションではありますが、インバウンド市場が4000 万人、さらに6000 万人となれば、既存のホテル旅館マーケットへ与える影響は長期的に見て、特に東京においては依然相当程度であることが予想されます。

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