教育施設を開設した日本郵船
前回、客船の乗客の最大の関心事は食事の内容にあり、客船は料理の質を高めていたことに触れたが、そんな時代、ホテルの料理人が客船に乗って腕を磨いたこともあった。 例えば『万平ホテル物語~軽井沢とともに100 年~』( 中安宏規著、万平ホテル発行、1996 年)に、こんな記述がある。
「万平ホテルの料理の旨いことは、佐藤氏(引用者注:二代目佐藤万平)自身が豪州郵船航路に、或いは北米航路の外国船に司厨になって乗り、つぶさに舌の修練を行っているだけに得意とするところである」
これは、1933(昭和8)年に発行された雑誌の一文である。
この記事に出た豪州郵船航路とは、日本郵船の客船を指しているが、同社では明治末期から大正初期にかけて、各船に指導者を乗せて教育を行なっていたという。
第1回
「おもてなしの精神」とは何か ~歴史に学ぶ接遇の極意~
連載第17 回 地上のホテルをしのいだ洋上のホテル:後編
【月刊HOTERES 2015年04月号】
2015年04月10日(金)