⑴モチベーションアップなどといった個人に起因するものではなく、各組織、フォロワー各人が“ 機能” しているか否かのファンクションに注視する
組織活性と言うと、よく一般的に取り上げられるのが、この“ モチベーション(動機づけ)” という思考です。イキイキ、はつらつと組織の各人が仕事に臨むことができるよう、モチベーションを上げて、と多く耳にしますが、モチベーションでは、正直、仕事はできません。気概で結果は出ません。そしてまた、このモチベーションというものは、個人に紐づいた発想のため、それを組織で変化、作用させることは、なかなか至難の業です。そのため、フォロワーシップ思考では、何より組織やフォロワー、部下を“ 機能” させることを第一に考えます。気分ではなく、気概でもなく、“ 機能” させることに注視します。組織において、一番の危機は停滞、停止です。フォロワー、部下が止まってしまうことは大きな危機であることを、リーダーは危惧しなくてはなりません。そのために、その“ 機能” の根源である必須作業の整理整頓を行ない、各人にその手法も懇切丁寧に指導し、徹底して行なうよう指示するのです。一見、とても“ 当たり前” の作業で、“ いまさら” 感も強く感じるものですが、この起点なしでは、変革は結果なきものとして終わってしまいます。何よりもまず、各組織、フォロワー各人が“ 機能” して、一つ一つの動きとして、実働していくことに注視しなくてはなりません。
⑵仕事本来の“ 目的” とその“ 手段”の整理整頓を行なう
そして次に、会社組織を俯瞰してとらえ、その組織の中で自組織の立ち位置を改めて再考し、いま、ここ、でやるべきことを、フォロワー部下へ、明確に徹底しなくてはなりません。そこでよく起きてしまう事象が、“ 手段の目的化” です。本来の“ 目的”を整理整頓しておかないと、目先の作業や行動に注力してしまうばかりに、目的と手段を混同し、懸命に動くフォロワーを、間違った方向へと導いてしまうことです。特に多く、目立つ行動に、仕事の結果=利益を出すために、手段を選ばずに盲目的にその行動や手段を続けてしまうという事象です。最近よくニュースなどでも報じられる偽装や粉飾なども、このことが起因していることが大きいと思えます。フォロワーがそのようになってしまうことは、まさに現場のリーダーが機能していない状況とも言えます。まず、“ 目的” を再度、整理し、その目的のために最適な手段を選択し、それに集中させることが重要です。そしていかなる時も、その手段の選択が適切であったかを適宜判断し、その修正や変更も鑑み、指示指導していくことこそ、フォロワーを導くリーダーの責務と言えます。
⑶ “ 初心” にストーリーで戻す
フォロワーも含め、リーダー自身、常に自職を選択し、専心している、そもそもの“ 初心” を忘れてはなりません。その思いを離れたとき、その方向性を見失い、間違った方向へと仕事も向かってしまいます。それはフォロワーも同じです。常に“ 初心”を見失わずに、前進していくことが大切です。しかしながら、それは単に言葉や想像だけでは、確固たるものとして心の奥深くに入ってくるものではありません。重要なことは、ただ思い返すだけでなく、ただ覚えているだけでなく、心深くに刻み直すことです。そのために効果的なことは、そのときの状況を“ ストーリー”で読み返すことです。物語的に周囲の環境や状況を含めて思い返し、その際にその当時の写真や流行した歌などを参考にしながら、導いてくるのも効果的です。また、前述の証券会社の変革においては、同じ店長職であったこともあり、同期入社も散在したため、対話メソッドを活用してエピソードで、双方で触発することによって、振り返りを行ないました。
また、その際に大切なことは、ただロジカルに正当性を構築することではなく、その初心と現在置かれている自分自身を、“ 他人事ではなく、自分事” として、置き換えてみることです。自らをその“ 当事者” として、自覚、認識し、ひもづけることが重要になってきます。
■解決結果
フォロワーシップ思考によるマネジメントは、組織を“ 機能(ファンクション)” させることに注視した手法です。リーダーシップ論のように、すべき論や責務を論じたものではなく、組織というものを、その時況や環境に適合させ、総合的かつロジカルに組織が置かれている状況を整理整頓し、止めることなく前進させるための手法です。
そしてそれはまた、その組織を機能させていながらに次世代のリーダーを生むべく存在を仕事の進行や実績とともに現場で体得、自覚させながら育て上げる手法とも言えます。高度情報化に伴いこれまで以上に効率化が重視される現代組織で重要なことは、自組織、自身の“ 当事者” 意識にあります。大きく、速い時代や時況の流れと協働するためには、各組織、各人が当事者意識を強く持って、それぞれが確実に機能し、前進していくことが重要です。そして、そのフォロワーのいわゆるナンバーワンが次世代のリーダーとなっていき、次世代の会社をより素晴らしい方向へと導いてくれるのです。
大住 力(おおすみ・りき)
ソコリキ教育研究所 所長
公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」代表
東京ディズニーランドなどを管理・運営する㈱オリエンタルランドで約20 年間、人材教育やプロジェクトの立ち上げ、運営、マネジメントに携わる。退社後、「ソコリキ教育研究所」(研修・講演・コンサルティング)を設立し、前職での経験を生かして、人材育成プログラムを企業などに展開している
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