「プロレンタル」では、お客さまの状況にあわせて、最適な羽毛ふとんをオーダーメイドで提供している
ライフスタイルに合わせて
羽毛ふとんをオーダーする時代へ
□もともと日本人は、改良するのが得意ですね。
やがて台湾に生産拠点が移って、とにかくダウン率が高いものが高品質なのだという、本来とは異なる考え方をベースに羽毛ふとんが製造されていきました。アヒルを例に取ると一羽に約120 gの羽根が生えていて、そこからダウンは約9gしか取れません。ですから一枚の羽毛ふとんを日本流に造ろうと思えば、約120 羽のアヒルが必要になるのです。ダウン以外の羽根は日本の製品には使えないという、とても非効率なやり方を日本のマーケットは続けてきたわけです。そのため1979 年から1981 年当時、一枚の羽毛ふとんの平均価格は30 万円と高価なものでした。
その後、中国との国交が正常化して、羽根がどんどん入ってくるようになり、羽毛ふとんの価格もリーズナブルになっていきました。一方、それまでダウン率に軸足を置いて製造されてきた日本の羽毛ふとんは、グレーより白がいいという羽毛の色による差別化を図るようになり、次に鳥種、嵩高へと移り、今は原産国に着目するようになってきました。本来の性能とは無関係なところで、価値観を打ち出す方法で展開してきたのです。
日本における羽毛ふとんのマーケットは、導入期、成長期を経て、安定期もほぼ終わりそうなところまで来ています。羽毛ふとんの世帯別普及率を見ると100%を超えていますから、今後の家庭用については買い替え需要が主体になってくると思います。
私たちは1943 年に公益財団法人として設立された科学技術振興会・快適睡眠環境研究所と協力関係を結び、睡眠環境に関する研究を続けています。例えば最も快適に眠れる状態を考えたとき、身体と布団の間の温度が33 度プラスマイナス1度にするのが理想です。ですから、ダウン率や原産国の問題ではなく、睡眠を取る部屋の温度などの条件に合わせて羽毛ふとんを選ぶのがいいのです。
従って一つの可能性として、個々の消費者のライフスタイルに合わせて羽毛ふとんを選ぶ時代に入ってくるのではないかと予測しています。羽毛ふとんをオーダーメイドする時代が到来するかもしれないと期待しているのです。
フレキシビリティーに富んだ形で、寝具をレンタルする仕組みを構築
□環境問題への配慮という側面からも、啓発に力を入れているそうですね。
羽毛はケラチンという非常に丈夫なタンパク質でできているので、上手に手入れをしていけば100 年使うことができます。ところが東京では、ふとんはずっと粗大ゴミのトップになってしまっています。
ですからリサイクルし、みんなでシェアしながら、上手に資源を活用していこうという流れができてくるのではないかと考えています。実際にドイツでは、三代にわたって一枚の羽毛ふとんを使っていると言われています。日本も昔のように、町の布団屋さんで打ち直しをしながら使っていくような生活のリズムを、大きな流れの中で取り戻していかなければならないと思います。
□ホテルのような存在が、真っ先にそういったメンタリティーを醸成させていくべきなのかもしれません。
私たちはホテルや旅館をサポートするために、寝具の「プロレンタルサービス」という仕組みを作りました。
ホテルや旅館が「プロレンタル」を使うことのメリットとして、一つには初期投資の問題があります。私たちが羽毛ふとんをはじめとする寝具の仕組みをレンタルの形にしたのは、所有権を移転しないシステムによって、誰でも使えるようにしたいと考えたからです。
また、ホテルや旅館がふとんの手入れをしないのは、代替のふとんがないからという事情もあるようです。洗濯に出してしまったら、その間に使うふとんがない。今は稼働率も非常に上がっているので、特に難しい状況が生まれてしまうでしょう。レンタルであれば、そういった心配がなくなります。「プロレンタル」はフレキシビリティーに富んだ仕組みです。ふとんの法定償却年数は3年なので、購入してしまうと負担が大きくなってしまうのではないかというのが、そもそもの私たちの発想です。
その一方でホテルの業績がとても好調な時期であることから、今のうちに新しいふとんを買っておこうという考え方もあるようです。その場合は買い戻し特約を付けて、メンテナンス契約を交わした上で、要望に応じることができます。
私たちは「プロレンタル」の契約期間を基本的に10 年に設定しているのですが、長くしてほしい、短くしてほしいなど、個別の要望にも対応していきます。例えばキャッシュフローがいい状態なので、レンタル料金を前払いする代わりにディスカウントしてほしいといったケースにも、個別に交渉した上で応じる形で展開しています。