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  • 駐日英国大使館 DESIGN UK 2015 セミナー 「ロンドン(2012)から東京(2020)へ、進化するホテルデザイン! 〜レピュテーションで浮かび上がるデザインの重要性〜」
駐日英国大使館 DESIGN UK 2015 セミナー

 「ロンドン(2012)から東京(2020)へ、進化するホテルデザイン! 〜レピュテーションで浮かび上がるデザインの重要性〜」

【月刊HOTERES 2016年01月号】
2016年01月08日(金)
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左から、小誌専務取締役村上実、村上明穂氏、トム・ディクソン氏、石原祐一氏

パネルディスカッション
トム・ディクソン氏×村上明穂氏×石原祐一氏
司会/オータパブリケイションズ 村上実    
 
【テーマ1】
ホテルデスティネーションの実現
 
司会 日本のホテルがデスティネーションになっていくためには何が必要でしょうか。
 
石原 日本の場合、旅館にデスティネーションの感覚があるのではないでしょうか。歴史がある土地に温泉があって、地元の料理がある。行くのも大変な山奥にあって、予約も取りづらいのに出かけていく人たちがいるわけです。周りに有名な観光地がなくてもその旅館に宿泊するのは、旅館デスティネーションがあるからだと言っていいのではないでしょうか。また、それが外国から見たときの日本の魅力でもあり、その面に期待を持たれていることは確かだと感じています。
 
ディクソン 確かに日本のホテルはデスティネーションになっていないと思います。私は日本の伝統的な畳で寝てみたいと思い、ありとあらゆる手段で予約を試みましたが、最も高い価格帯の旅館でもない限り、海外から予約を取るのは不可能だと実感しました。また、カプセルホテルの滞在は試してみましたが、あのようなリーズナブルな施設は学生向けにアピールするなどさまざまなアプローチができると思います。私のように畳で寝てみたいと夢見る外国人旅行者は大勢いるでしょう。日本がホテルデスティネーションを達成していくためにできることは、まだまだたくさんあると思います。
 
村上 旅行者が求めているホテル空間に必要なのは、その土地を表現したテイストなのだろうと思います。逆に言えば、ホテリエにアンケートを取ってみたら面白い結果が出るのではないでしょうか。ホテル業界の専門家たちが、自らのデスティネーションとしてどのようなホテルを選ぶのか。私はそのことに非常に興味があります。
 
【テーマ2】
変えてはいけないもの、
変えなければいけないもの
 
司会 デザインのベーシックな約束事の中で、変えてはいけないもの、変えなければいけないもの何でしょうか。
 
石原 私たちはブロダクトデザインをするときに、「固定部と変動部」という言い方をよく使います。人間の根源的な欲求や意識の部分はあまり変わらないでしょう。たとえば時計のテクノロジーは進化してきていますが、デザインのフォーマットとしてはがんばって丸いものを作ろうとしたり、革ベルトをつけてみたりといったことが行なわれています。さらにディテールで言えば、素材に対する触感はあまり変わらないのかもしれません。
 
ディクソン これはホテルについても言えることですが、私が守りたいものはローカル性です。旅行の目的地に到着したら、人はその町の一部になりたいと願うものです。その意味ではAirbnb によって外国から来た人が町に住む人の家に泊まり、より直接的にその町や人々とつながりを持てるようになってきたことは、従来型のホテル産業にとって最も大きな脅威だと思います。目的地の一員になれたという感覚を持つことのできる場所を提供できるデザインが求められ、そこではローカル性が大切な要素となっていくのではないかと考えています。
 
村上 ヒューマンスケールはデザイナーが変えたいと思っても変えられませんし、人間の持っている情感や情緒が最も変わらない部分だろうと思います。片や物理的なスケール、あるいは色やテクスチャーはロングスパンの中で変えていって然るべき要素だと思います。だからこそ今、コンバージョンがよく見られるのでしょう。古い建物の中を現代風に変えていく方向性が求められている。これからも人間の情感や情緒は私たちが変えられるものではありませんから、この点を重視して物語(ナラティブ)、すなわち無意識の領域でのストーリーをベースにデザインを展開すべきだと思います。
 
【テーマ3】
デザインの現状をどのように呼ぶべきか
 
司会 100 年後の未来に2015 年をアーカイブ化したとき、現在をどのような時代として呼称しておけばしっくりくると思いますか。
 
石原 「揺り戻し」の時代だと思います。最近のプロダクトやファニチャーを見ても、ちょっと崩したり、クラフトの要素を入れるといった傾向が見られます。素材についてもばきばきの最新マテリアルではなく、従来からあったあたたかみが感じられるものをメタファーとして入れていくような使い方が主流です。その一方で単に戻るのではなく、少し違った使い方、実験的な取り組みに挑戦することでスパイスを効かせるやり方も見られます。
 
ディクソン 「ノスタルジック」な時代と言えるでしょう。私たちは皆、将来を恐れている。あまりにも早くものごとが変わりすぎているため、多くの人たちが後ろ向きになっていると感じます。たとえば1960 年代の感覚は、未来志向という意味では2015 年よりも進んでいたかもしれません。今は新しいデバイスなどもありますから将来志向にも見えますが、人々の意識としてはその志向は縮小傾向にあると思います。
 
村上 「折衷的」という言葉に尽きると思います。21 世紀が幕を開けてから15 年が経過し、これからさらに85 年やっていくわけですが、将来にわたって折衷的な部分はますます台頭してくると思います。従来のホテルの感覚を残しながらも、21 世紀に沿って創造された要素がさらに折衷されていく。そんな時代にあると思います。
 
DesignUK についての問合せ先:駐日英国大使館 貿易・対英投資部 柳澤 03-5211-1154

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