ホテルは、施設に到着する前からホテルにチェックインし、そしてチェックアウト後に別途目的地があればそこに向かうという大きな利用文脈の中でホテルの滞在体験として心理的認知や記憶処理がなされています。その滞在体験を望ましい形でコーディネートしてポジティブ感情とともに長期記憶にとどめてもらうためには、それら利用文脈について空間軸と時間軸から適切なサービス提供を用意し明確な形で顧客に伝える必要があります。特に昨今団体利用から個人利用へ需要者特性も大きく変化していますので、個々の顧客の目的や嗜好に照らして時間軸と空間軸を整理し、さらに個々の顧客のライフスタイルを崩すことなく満足できる体験を提供することが求められているのです。
昨今、ライフスタイル型ホテルと言われるようなホテルカテゴリー、ホテルブランドの多様化が進んでいます。これは出店するマーケット環境や料金水準に応じたホテルブランドを提供するという意味があるほか、個人顧客ニーズに対応する上で必然的に求められるホテル側のブランド対応とも言えるのでしょう。今回はそのような環境下において個人客・FITマーケットに対して適切なサービス提供をするにはどのような運営が求められるのかについて、ホテルや旅館の価値向上に関連する運営の在り方を時間軸視点および空間軸視点から探ってみたいと思います。
第2回
新しい視点「ホテルの価値」向上理論~ホテルのシステム思考~ 第168回
『価値を向上させる空間軸と時間軸視点』
【月刊HOTERES 2015年04月号】
2015年05月01日(金)