ヒルトンの採用・リテンションへの取り組み
----昨年 9月にヒルトン広島、11月にヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸、そして今年 6月にヒルトン沖縄宮古島リゾート、8月にはダブルツリー byヒルトン京都東山とその後も開業計画が続いています。一方でホテル業界では深刻な人材不足が顕在化しており、採用やリテンションは必須です。ヒルトンではどのような取り組みをされているのでしょうか?
おっしゃる通り採用やリテンションは重要なテーマです。採用に関しては日本・韓国・ミクロネシア地区のリージョナルオフィスに新卒採用ふくめリクルートメントの部署があり、ヒルトン全体として採用を強化しています。また、新卒採用においては大学や専門学校との関係性を強化しており、例えば先月開業したヒルトン沖縄宮古島リゾートでは約 80名の新卒採用に成功しています。
----宮古島という沖縄でも離島において約 80名もの採用ができたことは驚きです。ヒルトン全体での給与アップなどの取り組みもされたのでしょうか。
現時点ではありませんが、その重要性は感じています。ヒルトンでは業績や個々のパフォーマンスによってボーナスを支給する取り組みは以前より行なっております。
また、採用において重要なのは給与以外の要素もあるでしょう。たとえばヒルトンは今働いてくれているチームメンバーのためのさまざまなプログラムを用意し、2022年の「働きがいのあるグローバル企業 世界ランキングベスト25」において世界第二位を獲得しており、ヒルトンはこのランキングにおいて 7年連続でランクインをしています。さらには日本では 2022年に「働きがいのある企業」認定もされています。そうした取り組みも評価されていると考えています。
それに加え、新たな取り組みとして、動画での情報発信などによる採用マーケティングも展開しており「やりがいを見つけよう – Find Your Thing」をキーメッセージとして新卒採用、幹部候補新卒採用、中途採用、パート・アルバイト採用を行なっています。
また、新しい働き方へのチャレンジとしてギグワークの活用にも力を入れています。ギグワークとは個人が時間単位で働ける仕組みで、例えば調理であれば野菜を切るなどの調理補助の単純作業を行っていただくものです。新しい働き方へのチャレンジということもあって当初は苦労もありましたが、現在ではギグワークの方のトレーニング用に動画を作成・活用するなどし、うまくいっています。現在ヒルトンでは 1万 5000人ほどのギグワークの方に活躍してもらっています。
さらに、そうしたギグワークのシステムで働いていた方の中にも優秀な方がいて、結果として当初の業務とは違う部門で働いていただいたり、正社員やパートタイマーになっていただいたとか、そうした事例も出てきています。
----さまざまな採用に関するチャレンジの取り組みが非常に興味深いです。一方、リテンションに関する取り組みはいかがでしょうか。
リテンションも非常に重要なテーマです。コロナ禍でホテル業界では多くの人が離れていってしまいました。その中でどのようにチームメンバーのリテンションを維持するのか。ヒルトンではさまざまな取り組みをしています。
たとえば労働時間に関するフレキシビリティーを高めるものです。これはコロナ禍以前から取り組んでいたものですが、ご家庭の事情により働ける時間がそれぞれ違うことがあります。例えば朝7時から昼の12時までとか、そうした希望に添える取り組みはコロナ禍以前より行なっています。
また、ウェルネスへの取り組みもコロナ禍で重要性が増しました。コロナ禍では出社できず不安を抱えるチームメンバーも多くいました。そこで私たちはウェルネスも含めた取り組みとして Thrive@Hiltonというアプリを導入し、チームメンバーの健康、メンタルヘルス、目的意識をサポートする情報ツールを提供しました。また、 EAP(Employee Assistance Program)という、そこまで深刻ではなくても、ちょっとした悩みや気分が落ち込んでいる時にもう少しカジュアルに相談できるような仕組みもあります。フレキシブルな働き方への対応、チームメンバーの精神的なケアをしっかりとできる仕組みなど、ヒルトンでは力を入れています。