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2023年1月6-13日号 スペシャルインタビュー 森トラスト(株) 代表取締役社長/森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏

スペシャルインタビュー 森トラスト(株) 代表取締役社長/森トラスト・ホテルズ&リゾーツ(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏

【月刊HOTERES 2023年01月号】
2023年01月12日(木)
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インバウンドとドメスティックが融合して多様な旅行スタイルが混在していく

----日本のホテルの価格設定は世界標準から見て低すぎると感じるのですが、いかがでしょうか。

事業はある程度の利益がなければ持続的に成立させることはできませんので、損益分岐点を見ながら売るべき金額を定めていく必要があります。もちろん価格を安くすれば物はよく売れるようになりますが、いくら売っても赤字になるのであればやらない方がよく、その見極めは当然必要です。
 
問題はその金額に見合った価値をホテルが提供できているかどうかです。自分たちが提供している商品について、施設、サービス、ホスピタリティーなどすべての項目においてその価値をチェックしなければなりません。価格を上げたいのであれば、それだけの価値を生み出せるだけのものを創り上げる努力が求められるということです。
 
コロナ禍を通じて、販売価格を下げたからといってホテルに人が集まるわけではないと実感しました。コロナ禍であっても動こうと思う人は「そこに行きたい」という欲求が先にあり、ホテルの価格が高いか安いかはそこまで影響しません。
 
  一方で、その価格を社会が許容してくれるのかという問題もあり、価格を上げると不満が出てしまいます。ホテルは国内のお客さまと海外のお客さまの間で、二重価格を設定してはどうかという声も聞かれます。しかし、二重価格というのはどうなのでしょう。
  
マーケットのニーズに合わせて海外から人が来るのですから、そのニーズに合わせて単価を上げていくという発想は正しいとは思います。ただその結果として日本人がついてこられなくなってしまうかもしれませんし、二重価格によるハレーションも懸念されます。
 
日本国内におけるホテルのビジネス需要があまりないことを考えると、世界標準の価格というものをもう少し意識して、マーケットニーズにあわせて価格を上げることに対して、社会に受け入れてもらうことが必要なのではないでしょうか。
 
----これから地方には、どのような形で旅行者が向かっていくと思いますか。

 コロナに関する規制緩和に伴って戻ってきた動きは、ドメスティックに関してはビジネスよりも個人中心のレジャーが先でした。それに対してインバウンドに関しては、個人ではなくビジネスから動き始めました。グローバルに仕事をしている限り、開国したならば日本に訪れるという、ビジネス上の必要性が発生したため、こうした状況になっているのでしょう。
 
 続いてレジャーのインバウンドが入ってくるわけですが、目的地はどうしても東京、大阪、京都といったメジャーな場所に集中する形になるでしょう。たとえリピーターであっても3年振りに日本を訪れるとなれば、まずは「東京に行きたい」「京都に行きたい」という気持ちなると思います。それ以外の地方にインバウンドが足を延ばすようになるまでには、一巡するまでの時間が掛かると見ています。
 
 順調にレジャーで訪れるインバウンドの数が増えていけばホテルの客室が埋まっていきますので、メジャーな都市から周辺の地域へと次第に滲み出てくるかもしれません。春節の時期にアジア系のインバウンドによって客室がある程度埋まってくれば、新しいホテルが開業している地方のエリアにも動きが見られるようになると考えています。
 
 その一方で日本人は一部の人たちを除いて、すぐにでも海外旅行をしたいという雰囲気にまではなっていないと感じています。円安の問題もあります。従って日本におけるドメスティック需要はまだ続いていくのではないでしょうか。その動きの中で全国旅行支援の後押しもあり、これまでは近場の旅行ばかりしていたけれども「まだ行ったことのない遠い地方を旅行してみよう」「新しいホテルが開業した場所に出掛けてみよう」という動きが起きているのが現状だと思います。
 
 2023年はインバウンド、ドメスティックの動きが融合していって、さまざまな旅行スタイルが混在したマーケットの状況が生まれてくるのかもしれません。

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