トップダウン経営から組織型経営へ
----4月に現在のポジションに就任をされ、5月には新中期 5カ年計画「AIM5」を公表されました。そこに込めた想い、お考えについて教えて下さい。
これまでのアパはトップダウン型の経営を行なってきたことで、日本最大のホテルチェーンへと成長を遂げることができました。一方、新体制以降は従業員の意見を集約できるような組織型経営へ移行する必要があると私は考えました。
トップダウン型の企業においては経営者はピラミッドの一番上に位置し上意下達で君臨していますが、私が今後推進するのは経営者が三角形の重心に位置し全方向に向けて旋回し、均等かつスピーディーに熱を伝える組織型経営です。私の造語ですが「TCOG(Triangle Center of Gravity)三角形の重心」経営と呼んでいます。
TCOG経営による組織型経営、そして AIや DXを活用した顧客ニーズの変化への対応に拠る顧客満足度向上と運営効率の向上、自社出店とFC展開の選択と集中などが AIM5の骨子です。
---- DXへの投資、それによる顧客満足度の向上に対する努力は業界の先駆けという印象です。
弊社では早くからデジタル領域への投資に取り組んできました。その代表的なものが昨年 3月に公表した 1ステップ予約、1秒チェックイン、1秒チェックアウトを実現した「アパトリプルワンシステム」です。
----チェックインで待たせない、非接触など、根本的なゲストが持つニーズに応えることはもちろん、コロナ禍の需要の変化にも対応できる仕組みとなりました。
コロナ禍を経てお客さまがホテルに求める顧客ニーズが大きく変化しています。これからもさらに変わって行くでしょう。今後のホテルは「ホテル業界はかくあるべし」という固定観念に囚われることなくより良く進化していく必要があります。
アパホテルはかねてから「進化するアパホテル」として、新しいホテルをオープンするたびに新しいサービスを取り入れてきました。いわゆる 1ホテル 1イノベーションです。1984年開業の第一号ホテルから会長が自動チェックイン機を導入するなど、これまで時代を先んじ、進取の気性でどんどんと新しいものを受け入れています。
今年 4月にオープンしたアパホテル〈なんば心斎橋東〉に初めてシングルとシングルのコネクトルーム(SSコネクトツイン)を導入しました。SSコネクトツインは 2つの洗面ボウル、シャワー、トイレ、TV、空調を設置することにより、個人個人のニーズにあった新しい宿泊形態として注目されると思います。アパホテルはラボ(実験室)です。今がベストだとは全く思っておらず、常に「Even Better ! APA HOTEL」(良いものをさらに良く)の精神のもと、お客さまに選ばれるホテルを目指して進化を続けます。
変わらない積極的な出店戦略
----国内、国外それぞれにおける出店戦略をお教えいただけますでしょうか?
私たちは 2020年に 27ホテル、2021年にも27ホテルを開業し、コロナ禍においても積極的な拡大戦略を図ってきました。
アパホテルは都心部では直営ホテルの展開を進め、地方では FCホテルの展開を進めていきたいと考えています。今後はマーケティング調査に基づいた、新たなニーズにマッチした立地への展開を加速させるとともに、直営ホテルとFCホテルの共存共栄を意識のうえ、エリア特性を考慮した棲み分けによって効率的なアパホテルネットワークの拡大を目指し、2027年 3月末までにアパホテルネットワークとして 15万室の展開を目指します。
海外事業においては 2016年に買収したコーストホテルのリソースを使い、当面の間は北米市場にフォーカスして事業を進める考えです。カナダ国内 100万人都市でビジネスと観光両方で期待が持てるエリアやアメリカの西海岸の主要都市での展開強化を目論んでいます。日本は今後人口減が予想される中で、海外事業は今後の成長戦略の一つです。本年2022年はコーストホテルの50周年であり、次の 50年に向けてまずは中期計画として海外ネットワーク1万室達成に向けて動く予定です。