The Okura Tokyoのビジョンにつながるサステナビリティーの形を構築したい
----ホテルのブランド価値を向上させるために、新しいテクノロジーをどのように駆使していきますか。
ITや AIを含めて、先進技術は可能な限り採り入れていこうと考えています。ただし人間が行なうサービスについては、伝統のやり方を重んじて変わらず続けていきたいと思います。
今後は少子化による影響がさらに進んでいきますし、なかなか人材が集まらない時代が続くでしょう。この状況の中で従来通りのサービスを提供していくためには、ITや AIを推進し可能な限り作業を軽減することで、より多くのスタッフに接客側の表に立ってもらい、サービスをさらに充実させていく必要があるでしょう。
テクノロジーの活用という意味では、調理スタッフもインカムを活用し、効率化を図っています。同時にキッチンにはモニターを設置し、宴会場の様子が逐一確認できる形になっています。調理スタッフが料理を出すベストなタイミングを的確に把握することができるためです。
---- SDGsの取り組みが求められる時代ですが、そのトレンドに対してどのような姿勢で臨んでいますか。
基本的にサステナビリティーに向けた取り組みとラグジュアリーホテルのあり方を共存させるのは非常に難しいと思っています。あえて言うのであれば、私たち
が展開しているSDGsの取り組みに対して、お客さまに共感していただくことが最も大切だと思います。
お客さまがホテルを訪れて、その空間で楽しんだり安らいでいただく中で、ごく自然にサステナビリティーに貢献できる仕組みを創っていくことは、ホテルにできるSDGsに向けた活動の一つだと思います。
The Okura Tokyoは、実際にサステナビリティーに関する取り組みをさまざまな側面で進めています。それは今に始まったことではなく、以前から続けてきたことがほとんどです。The Okura Tokyoのビジョンにつながる形でサステナビリティーを推進することが大切だと思っています。
The Okura Tokyoは 2012年の創業 50周年時に「ただ、ひとつのホテルとして。」を掲げていますが、2011年の設計の段階からそのビジョンに沿った動きをしてきました。当時のホテル業界ではSDGsという言葉そのものがまだ浸透していませんでしたが、省エネルギーや地域に対する緑化計画、廃棄物の分別リサイクル、そして快適で安全性の高い都市計画などを設計に盛り込みました。
同時に国が推進するサステナブル建築物等先導事業に応募して、認定を受けています。さらに港区からはみなとモデル二酸化炭素固定認証制度によって、 CO2固定量を認証した建築物として認定されています。また、敷地の約半分の土地を緑化して、地域の憩いの場となる公園として開放する計画を打ち出し、第40回緑の都市賞で国土交通大臣賞を受賞しました。
必要に駆られてという理由で SDGsに取り組んだわけではなく、もともとホテルとしてサステナブルな社会づくりに貢献したいという気持ちから設計を進めており、実際にサステナビリティーに寄与する建築物を生み出したという経緯があります。
たとえば井戸水の活用や雨水・厨房・プールの排水を中水として再利用することについても十分に検討を重ねて、リユースの仕組みを導入することでサステナビリティーに関する数字を見える化できる建築物になっています。