日本橋三四四会のロゴマークは江戸文字大家の書家、橘右之吉氏によるもの。老舗店も多い三四四会を体現し、日本橋地域が大切に守る江戸文化を感じるロゴマークだ
日本橋料理飲食業組合青年部「日本橋三四四会」が緊急事態宣言の再発令を受け、中央区内の病院で働く医療従事者や高齢者施設・保育施設のスタッフ、さらに行政機関の最前線で働くひとびとなどを対象に4500個のお弁当を22店舗が集結し、日々交代で届けた。この取り組みはコロナ禍における緊急事態宣言発令の度に行なっており、今回で7回目となる。今までに延べ18770個のお弁当を提供しており、さらに昨年はクラウドファンディングを立ち上げ、福祉施設に約2000個のお弁当も提供した。主に日本橋のオフィス街を中心に店舗が在する「三四四会」のメンバーはリモートワークの導入や接待の激減により他の飲食店同様に苦しい状況を強いられていることが予想される。その中でなぜこのような取り組みを行なっているのか? 現三四四会会長のうなぎ・割烹 大江戸の十代目当主・湧井浩之氏にお話を伺ってみた。
「時短営業や酒類の提供休止の状態で営業を続けている店がほとんどですし、この辺はビジネス街ですから、元々社用の多い街ということでテレワークで出勤が制限されている中で営業的にはみな、かなり厳しいのが現状です。中でも接待が行なえる社会情勢ではないのか? 酒類の提供休止が大きく影響しているのか? 夜の営業が厳しいお店が多いと思います。みなさん、テイクアウトをはじめるなど営業努力はされていますが、昨年の今頃のようなテイクアウトブームとは程遠い状況で、デリバリーもいまいち伸びていない感じです。弊店は最近タクシーデリバリーも始まったが、まだまだ反応はあまりないですね。しかしこれは日本橋だけに限ったことではありませんし、大変なのはみな同じです。その中でとにかくコロナと戦う最前線の皆さんへ“おいしい”をお届けし、力に変えていただきたかった。人は、おいしいご飯を食べると、自然と力が湧いてくるものです。われわれにできることは、おいしい食事を皆さんに提供すること。それしかできないし、それがわれわれに与えられた社会的使命だとも感じています。そうすることで、われわれも共にコロナウィルスと戦うことができるんじゃないかとも思いました。そういった思いがある中でわれわれの経費や配送費なども含めスポンサードしてくださる地元の企業があり、この取り組みを行なっています。各店舗からの配送も仲間の会社が引き受けてくれており、まさに日本橋がひとつになって行なっているプロジェクトなんです」。
提供先に医療従事者や高齢者施設のスタッフの方たち以外に保育施設があるのが他にあまり例をみない事例だが、なぜそういった提供先を選んだのだろうか? 「お弁当の提供先については中央区にご相談して、ご紹介いただいたところに納めさせていただいています」。活動に際しては提供先から届く声に元気をもらうことも多いという。「提供先の方たちからは『お弁当って、こんなに頑張る力になるんだなって思って、毎日頑張れました!』『感染症でピリピリ、どんよりしがちな現場で、色とりどりのお弁当は、本当に癒しでした』『コロナ絶頂期の頃は、本当に辛くて、しんどい気持ちでしたが、このように応援してくださり、とても嬉しく、励みになりました。“食”が持つパワーを改めて知りました』といったお声をいただいています。われわれの思いが届いていることを感じますし、やってよかったと思う瞬間です」。
先週末、さらなる緊急事態宣言の延長が発表された。一日も早いコロナ収束と共に三四四会のすべての店舗がベストの環境で、それぞれのお客さまに“おいしい”を届けられる日が来るのを強く願うものである。
日本橋 三四四会
https://www.344.gr.jp/index.htm