酒蔵の経営者としてビジネスに取り組み「いい酒を造る」という根源を守り抜く
島田 「紀土(KID)」というセンセーショナルな名前で出された日本酒シリーズと、「紀土 無量山」という最高峰の酒が誕生するまでのストーリーを聞かせてください。
山本 「紀土」は「紀州の風土」という意味を込めたネーミングです。加えて、これからの日本酒業界を盛り上げていく「子ども(KID)」となってほしいという思いも込めました。チャレンジに2回目、3回目はないと思っていますので、人生を賭けた一発勝負の気持ちで挑んだのが「紀土」でした。清らかでなめらかな紀州の水の味わいを表現できている酒であり、温暖でからっとした和歌山県の気候性も味わいに出ているはずです。
「日本酒への入り口の一つになれる酒にしたい」というのが、「紀土」のコンセプトです。若い飲み手や海外の方々が手に取りやすく、すんなりと入ってもらえる酒にしたかったのです。その意味で、いす取りゲームの「いすを創る」を具現化できたのが「紀土」シリーズだと言えます。
次に海外に向けてステップアップするにあたり、入り口の酒とともにハイエンドの評価を得られる酒も造る必要があると考えました。海外マーケットと高品質な酒を求める国内マーケットに向けた酒造りを5年前に始め、そこから生まれたのが「紀土 無量山」です。うちはもともと寺をやっていた家系で、その寺の名前が無量山超願寺だったことから、「紀土」シリーズにおける最高峰の酒の名前に使わせていただきました。