所有をベースに拡大してきた強固な財務基盤は大きな強み
---コロナ禍においても積極的なホテルの自社開発を進めていらっしゃいます。コロナ禍で営業収益が低下する中で、財務面含めて問題ないのでしょうか?
アパグループではホテルを自社で開発し、ホテルを所有することを基本的な考え方として展開をしています。土地に関しては所有者様のご意向に沿って定期借地契約の場合もあります。
これは財務的な観点で、建物や設備、備品等、所有することで減価償却の対象となりますから、それによる節税効果も含め、財務基盤を強化することでこれまでのような積極的な展開ができたのです。
弊社の財務基盤は総資産に対して約30%の借り入れしかありません。さらに、このような状況ですから金融機関様も積極的に融資をしてくれようとしています。そうしたことも含め、弊社ではこれまでと変わらず積極的な展開を目指しています。
---今、日本にはさまざまなホテルチェーン・グループがありますし、独立系ホテルもあります。その中でのアパホテルグループの強みについて教えて下さい。
アパホテルには現在全国に累積1900万名を超える会員様がいます(※ 2 月5 日現在)。これは業界内でも随一のメンバー数と言えるでしょう。アパホテルは1984 年の第一号ホテル開業時からホテル事業で成功するためにどうしたら良いかを考え、キャッシュバック付き会員システムを採用しました。アパホテルの主なお客さまはビジネスマンですから、キャッシュバックの仕組みは大変喜ばれています。
また、先ほど出たIT 投資という点では、2017 年4 月にアパホテル公式アプリの配信を開始し、常に改善を積み重ねることで高い満足度を獲得できていることもあり、2021 年1 月には200 万ダウンロード数を突破しました。アプリでは先ほどお話したQR コードをかざすだけでルームキーを発行するシステム「アプリチェックイン専用機」なども活用できることもあり、ダウンロード数だけでなくアプリを経由した予約数も多いなど利用率も高く、それが会員制度の顧客基盤をより強固にしています。
コロナ禍はアパホテルにとって運営軒数拡大のチャンス
---最後に、今後の構想について教えて下さい。
アパグループでは2010 年4 月に開始した「SUMMIT 5(頂上戦略)」において東京都心で最大の展開軒数を実現する戦略をとり、現在は23 区内で直営ホテルのみでも78 棟1 万9000 室(建築・設計中含む)を達成しました。また、2015 年4 月に開始した「SUMMIT5-II(第二次頂上戦略)」では国内では東京中心から地方中核都市へと展開を広げ、目標として掲げていたパートナーホテルを含むアパホテルネットワークにおいて10 万室の展開を達成しました。
現在は、2020 年4 月に開始した「SUMMIT5-III(第三次頂上戦略)」において、国内で圧倒的なナンバーワンホテルチェーンとなるべく2025 年3 月末までにアパホテルブランド(直営・フランチャイズ)客室数10 万室、パートナーホテル含むアパホテルネットワークとして15 万室の展開をめざしています。
コロナは業界にとっては逆風ですが、私たちが過去にリーマンショックを機に飛躍できたように、今回もさらなる運営軒数の拡大のチャンスだと考えています。これまで訪日外国人増や東京五輪を背景にホテル開発が加速し、供給過剰とも言われていましたが、コロナ禍で年間3000 万人、4000 万人の訪日外国人がほぼゼロとなり、状況は大きく変わりました。それは私たちにとっては、大きなチャンスなのです。