外国と日本の間の“当たり前”の乖離を埋めなければ日本酒の地位を確立できない
日本酒造組合中央会認証「日本酒スタイリスト」として精力的に活動を続けるタレントの島田律子氏が、日本の伝統文化、日本酒の魅力を深く伝える連載の第2幕。「世界へ打って出る日本酒」に主眼を置き、輸出に力を入れる酒蔵、インバウンド対策が得意な酒蔵、ソムリエから見た日本酒の可能性などについて積極的に取り上げていく。「グローバルSAKE マーケットの創造者たち」と題したシリーズ、今回は従来の酒造りの常識にとらわれない経営者兼醸造家として取り組みを続ける、(株)萬乗醸造の代表取締役、久野九平治氏にご登場いただいた。従来の酒造りのスタイルからの脱却を図ることで、国内のみならず食中酒として海外のシェフ、ソムリエにも受け入れられる「醸し人九平次」を生み出し、フランスを中心に日本酒マーケットを開拓してきた久野氏。“ 醸し人”としての説得力を手に入れるため、兵庫・黒田庄町に自ら田んぼを持って酒米を作り、さらにはブルゴーニュの村、モレサンドニに根を張りワイン造りも手掛けている。まさにグローバルSAKA マーケットの創造者としての活動を続ける久野氏の熱量と行動力、未来に向けられた視線を探る第2回目をお届けする。
島田 律子(しまだ・りつこ)
日本航空(JAL)国際線CAとして 5年半勤務後、タレント活動を始める。2000年「利酒師」(SSI)取得後、2001年 日本酒造組合中央会より「日本酒スタイリスト」に任命される。TVや雑誌への出演、コラムの執筆など、メディアでの活動を多数こなす。また近年、訪日外国人に向けた日本酒の会の主催にも力を入れるなど、国内外に向け日本酒の魅力を広く発信する。
HP:http://www.smile-brew.com/
久野九平治氏(くの・くへいじ)
1965 年愛知・名古屋市生まれ。久野家9代目から始まった萬乗醸造の15 代目。純米大吟醸酒、純米吟醸酒しか醸さない国内で希少な蔵で、自ら現場に入る醸造家として活動する。大学中退後、演劇活動を続けるが、父親の病気などをきっかけに家業を継ぐ。先代の機械的大量生産、下請けの仕事のスタイルから脱却し、小仕込みで量より質の酒造りにこだわる手造り農家的な仕事へと回帰。97 年「醸し人九平次」ブランドを立ち上げる。その後パリに渡り、ホテルリッツ、三つ星レストラン「ギー・サヴォア」へ売り込むなど日本酒の世界進出における先鞭をつけた。2010 年米農業を始める。16 年フランス・ブルゴーニュでワイン醸造を始める。