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伝統とイノベーション、供給力と品質。プロセッコの“6億本市場”を支える ワイナリーの文化的価値

【月刊HOTERES 2020年03月号】
2020年03月06日(金)
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2019年7月に、コネリアーノからヴァルドッビアデネにかける丘陵地がユネスコ世界遺産に認定された北イタリアのワイン、プロセッコの産地。世界で最も多く飲まれているスパークリングワインの“メガ・プロダクション・エリア”の魅力を伝える第3回は、抜群の供給力を発揮する協同組合と高いブランド力を発信するワイナリー、唯一無二の味わいとホスピタリティーが魅力のファミリーの三者三様を紹介する。

Villa Sandi すべての特徴を備えたプロセッコ

チーフワインメーカーのステファノ・ガーヴァ氏
チーフワインメーカーのステファノ・ガーヴァ氏

断続的に続くブドウ畑にワイナリーが点在するヴァルドッビアデネ地区で、1975年設立の「ヴィッラ サンディ」(https://villasandi.it)は市場における高いプレゼンスと品質を兼ね備えている。その荘厳なヴィッラの歴史は1622年にまでさかのぼり、モレッティ・ポレガート家がこの地のワイン文化を育んできた。
ワイナリーに流れる水路を用いた発電と最新鋭の醸造やボトリングシステム、World Biodiversity Associationによる 「Biodiversity Friend」に認定された畑から、この地域の環境保護や生物多様性、植物の保護を推進する。自社畑のブドウから造る「Villa Sandi」ブランドは、グレラ種ならではのアロマにこのエリアを象徴する青葉の香りで複雑な味わい。栽培農家からのブドウも用いるもう一つのブランド「La Gioiosa」は白桃や洋梨の香りとすっきりした味わいが特徴的。果汁を氷温で貯蔵して一回の発酵で造り上げる一元発酵ならではのフレッシュさは共通している。
この産地における最高峰のクリュでわずか106haの「カルティッツェ」のブドウで醸す「Villa Sandi Cartizze Brut」は辛口ながら絶妙なアロマと奥行きのある味わいを強く印象に残す。

 

Tenuta Santomè 唯一無二のミネラル感は保守と革新から

テヌータ・サントメのプロセッコDOCエクストラドライ(右)とブリュット(左)。ミネラル感たっぷりの個性は唯一無二の味わいと言える
テヌータ・サントメのプロセッコDOCエクストラドライ(右)とブリュット(左)。ミネラル感たっぷりの個性は唯一無二の味わいと言える

トレヴィーゾの中心街から10kmほど東にある「テヌータ サントメ」(www.tenutasantome.com)は、祖父のアントニオ・スピナッツェ氏と父のアルマンド氏が取り組んだブドウ栽培を経て、1999年に30haの敷地からスタートしたワイナリー。醸造家のアラン氏とビジネスを司るウィリアム氏の兄弟によるプロセッコには比類ないミネラルが感じられる。
ワインは60haまで広がった自社畑のブドウだけで造る。トレヴィーゾ県を横切るピアーヴェ川は、かつてのオーストリア・ハンガリー帝国とイタリアとの戦地であり、敷地からは今でも銃弾や砲弾が掘り起こされる。石灰を多く含む川沿いの土壌は味わい深さの源となり、DOCエリアの“平地のプロセッコ”にも複雑味をもたらしている。
プロセッコはベースワインを氷温貯蔵する方式を用い、計画的な二次発酵でコンディションの良いワインを市場にリリースする。ワイナリーには太陽光パネルを並べて6400kWhの電力を生み出し、年間98.2トンのCO2排出を削減するなど現代のワイナリーの在り方も推進している。DOCGエリアにもブドウ畑を所有し、土着品種のラボーゾを使ったスティルワインや赤のスプマンテ、国際品種とのブレンドなどユニークなワインも生産している。また、独自の乾燥室を駆使したパッシートも秀逸。シアターやプレゼンテーションルームも完備されたB&Bではワインの販売もしており、一連の活動のすべてに、彼らが考えるワインを通じたホスピタリティーを感じることができる。

左から父のアルマンド氏、弟で醸造家のアラン氏、兄のウィリアム氏はワインの販売や輸出などビジネス全体を司る
左から父のアルマンド氏、弟で醸造家のアラン氏、兄のウィリアム氏はワインの販売や輸出などビジネス全体を司る
一次発酵を施したベースワインは氷温貯蔵して、年間の生産計画の沿って二次発酵を行なう
一次発酵を施したベースワインは氷温貯蔵して、年間の生産計画の沿って二次発酵を行なう

La Marca 市場を支える親しみやすさと生産力

パステルブルーのラベルがチャーミングで、米国では絶大な人気を誇るラ・マルカのプロセッコDOCエクストラドライ
パステルブルーのラベルがチャーミングで、米国では絶大な人気を誇るラ・マルカのプロセッコDOCエクストラドライ

コネリアーノの中心から東に17kmほど、オデルツォ地区にあるワイナリー「ラ マルカ」(https://www.lamarca.it)は、プロセッコマーケットにおける“大使”のような貢献度を感じさせる。
1968年に設立された協同組合はその後、ほかの組合との統合を重ね、今日ではトレヴィーゾ周辺に点在するワイナリー9社による連合として存在する。面積にして1万3000haにおよび、栽培から醸造、出荷まで実に4500人が関わっているという。
オデルツォのワイナリーには巨大な二次発酵用のタンクが並び、その醸造には最新技術を用いたコンピューターで制御されている。質はもちろんのこと、生産効率の追求にも余念がない。1時間で最大1万9000本の瓶詰めが可能だというボトリング設備は生産ラインのスピードと処理能力、正確性を追求する。
もちろん量の追求だけではない。チャーミングな水色のラベルのDOCエクストラドライは北米市場で特に高い支持を得ており、日本にも輸入されている。すっきりとした味わいが好印象で、ニュートラルなプロセッコとして若い世代にも受け入れられるはずだ。
ワイナリーとは別に所在するコッレ ウンベルト地区の本社兼マーケティングセンターは、18世紀のベネディクト会の修道院を補修したもの。ラ マルカが発信する世界観をここで伝えている。年間6億本におよぶプロセッコ市場は、こうした供給力にも強みを持つ生産者によって、身近な存在たり得ているのだ。

 

ラ マルカの横型で二段に積まれた醸造タンク。手前に立つクリスティアーノ氏が小さく見えるが彼の身長は2mある
ラ マルカの横型で二段に積まれた醸造タンク。手前に立つクリスティアーノ氏が小さく見えるが彼の身長は2mある

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