---西原さんはROKU KYOTO のどのようなところに魅力を感じましたか。
西原 今回のプロジェクトに関して私がもっとも魅力的だと感じたのは、LXRというコレクションブランドによって多くのメリットを得られると思えたところです。ヒルトンの会員にアプローチできるという強みがある一方で、芸術、文化、歴史に彩られた土地で、王道の京都ではなく、知られざる京都の風情を持つ鷹峯にお客さまを誘致するというチャレンジができる。そのことに大きな期待感を持っています。
鷹峯のエリアにはいいものがたくさんあるのですがまだ知らない方が多い。今まで知らなかった京都を、より多くの方々に見に来ていただくための取り組みを進めていきたいと考えています。「京都には何度も行ったことがあるけど、こちらの方面には足を延ばしたことがない」という方々に訪れていただくために、さまざまな体験プログラムをご用意するつもりです。かつて出会ったことのない体験を仕掛けていくことで、鷹峯の魅力を訴求していければと思っています。
京都にあるリゾートというユニークな位置付けのロケーションを活かしながら、「行ってみたい」と思っていただけるお客さまを増やしていければと思います。
ブランドづくりにとって重要なのはアイデンティティーを自覚すること
---数字的な目標を教えてください。
西原 ADR については、ひとまず京都市内にあるラグジュアリーホテルと同等に戦っていける金額を目指していきたいと思います。コロナによってまだ先が見えないところがあるので、稼働率については60%程度をイメージしています。アフターコロナにインバウンドが回復すれば、70%の稼働でさらにADR を上げることを想定しています。
売り上げ目標は年間25 億円で、かなり思い切ったチャレンジになると思います。ブランドもロケーションも認知されていないところからのスタートであり、そこからどのように這い上がっていくのかを考える必要があります。取り組みの中心になるのはセールスマーケティングで、いかにコンセプトを際立たせ、世の中にブランドを発信していけるかがポイントとなります。
---新しいブランドを創るために必要なことは何ですか。
西原 最も重要なのは、自分たちのホテルのアイデンティティーがどこにあるのかをしっかりと認識することでしょう。他のホテルと比べるのではなく、自分たちがそのホテルで何をしたいのか哲学を持って表現しない限り、ホテルのブランドを確立することはできません。そしてホテルが表現したいブランドの哲学を整理し、マーケットに対して訴求する流れを創ることも大切です。
ブランドコンセプトを現場のスタッフに落とし込み、広く浸透させるのはかなり難しいことです。それについては常にテコ入れをしながら、新たなアプローチでよりよい流れを生み出していく必要があると考えています。
もう1 つ重要なのはシステムですが、グローバルスタンダードに沿ったシステムを導入することで国際的な評価をいただくのもブランド構築にとって価値のあることだと思います。国際的な評価に裏打ちされたホテルであれば世界のVIP のご利用にもつながるでしょうし、そこからスタッフ全員が同じ方向に進もうとするスピリットが醸成されます。
そうしたブランドづくりに携わらせていただくことで大いなる学びを得られたパレスホテル東京での6年間は、私にとってかけがえのない経験となっています。その経験を、ROKU KYOTO のプロジェクトにおいても活かしていきたいと思います。
京都はホテルの激戦区であり、今後もいくつかのラグジュアリーホテルの開業が控えています。京都のマーケットにおいて私たちがROKU KYOTOのポジションをどのように確立していけるかは、大きくもとても楽しみなチャレンジになると思っています。