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星野リゾート

星野リゾート 「ホテル旅館ファンド(仮称)」の狙い

2020年06月05日(金)
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 2020年5月29日、星野リゾートと㈱リサ・パートナーズは新型コロナウィルスの影響に直面する国内のホテルや旅館に対し、宿泊施設の取得・保有を通じて事業承継、事業譲渡支援、またはオフバランスによる資金調達の手段を提供する「ホテル旅館ファンド(仮称)」を組成することを計画し、その運営会社として両社が50%ずつ出資をした「㈱H&Rアセットソリューションズ」を設立したと公表した。
 新型コロナウィルスの影響で事業継続に苦しむ独立系ホテルや旅館が出ているのは事実であり、そうした救済は必要である一方で、星野リゾートとしてはこれを通じて新規運営施設の獲得の好機とも見ることができる。星野リゾート代表の星野佳路氏は本取り組みの狙いを聞いた。 取材・文 岩本 大輝

 

4月5月に多数の相談が。
これに応えられる体制をつくりたい。

 
 2020年5月29日、星野リゾートと㈱リサ・パートナーズは新型コロナウィルスの影響に直面する国内のホテルや旅館に対し、宿泊施設の取得・保有を通じて事業承継、事業譲渡支援、またはオフバランスによる資金調達の手段を提供する「ホテル旅館ファンド(仮称)」を組成することを計画し、その運営会社として両社が50%ずつ出資をした「㈱H&Rアセットソリューションズ」を設立したと公表した。


同ファンドのスキーム図


 その背景には、新型コロナウィルスの影響で4月頃から星野リゾートに、事業継続が厳しくなった施設や施設のオーナー等から「運営をお願いできないか」といった相談が相次いだことがあるという。
 
「緊急事態宣言が発出された4月、5月は自身の施設のことで大変な時期でもありましたし、私たちは運営会社ですから、施設の所有はしません。ただ、問い合わせのあった施設を見ていると、これは界として運営できそうだなとか、リゾナーレにできそうかな、という案件もありました。
 そこで、そうした案件が来た時にすぐに対応できる体制にしようと、私たちからリサ・パートナーズさんにお声がけをさせていただいたのです」(星野氏)



星野 佳路氏

 
運営会社としても運営軒数を増やすチャンス
 
「日本の優良なホテル・旅館の事業継続をサポートし」(リリースより)とあるが、星野リゾートにとってもこれを通じて運営会社として運営軒数を増やすチャンスともみているのではないか?
 
「それはもちろんです。運営会社としてお声がけをいただいた施設を運営する。過去、銀行の不良債権処理に関わらせていただいた時から始まり、運営軒数を増やす中でスケールメリットを活かせる体制にもなっています。ここ10年を振り返ると、私が経営に携わるようになって初めてと言っても過言ではないですが、宿泊施設の需要過多の時期がありました。そういうときは、ホテル運営会社の運営力が業績に与える影響は少なくなります。こういう、大変なときこそ運営会社としての真価が問われる時であり、私たちにとってはチャンスだと見ています」(星野氏)
 

 
過去の再生モデルとの差異は?
 
 過去、ゴールドマン・サックスと組んで複数の地方旅館の再生を実現してきた星野氏。今回もそのノウハウは生きるのか?
 
「基本的な成長戦略は変わりません。ブランドを成長させ、顧客満足度を大切にし、労働生産性を上げる、この3つのことです。
 一つ過去と違う点があるとすると、当時は投資会社と組んでいても、そのイグジット先(売り先)のプランを持っていませんでした。リーマンショックの際にそうした施設がすべてイグジットされることになり、戸惑った経験があります。
 運営会社である私たちにとって長期的な視点を持ったパートナーが理想です。そうでないと施設の長期的なブランディングができないからです。それが、REITをつくった理由でもあります。そうしたイグジット先までプランにいれた取り組みという点では、過去の取り組みとは違うと考えます」(星野氏)
 

 星野リゾートは、最近では日本政策投資銀行(DBJ)をパートナーに迎え、共同運営ファンド「星野リゾート旅館・ホテル運営サポート投資事業有限責任組合」(通称「ホテル旅館リニューアルファンド」)を組成し、先日開業した「界 長門」はじめ、今後も「界 霧島」、「界 別府」、「界 ポロト」などの開発案件を手掛けてきた。
 
「今回のプロジェクトでは、DBJさんと組んだ時よりも、リスクを取りたいと思っています。DBJさんとの案件は新規開発が中心で、何年も時間をかけて取り組むプロジェクトでしたが、今回は既存の宿泊施設が、今運営に困っているという緊急な案件です」(星野氏)
 
 今回のファンド総額は100億円〜最大で200億円程度となる予定だという。物件にもよるが、相当数の案件が取得可能な数字だ。個人的には運営難易度や収益性を考えると、OMO(おも)やBEB(ベブ)となる可能性の高い案件を狙っているのかと考えていたが、そうではなかった。
 
「基本は、私たちが持つ5つのサブブランド(星のや、界、リゾナーレ、OMO、BEB)に入りそうなものが中心となるかと思いますが、私たちは青森屋やトマムなど、個性を持った施設の再生経験もありますので、まずは幅広く可能性を探りたいと考えています」(星野氏)
 

 今回の新型コロナウィルスによる旅行市場の急激な減退を見て、実際に私や弊社には海外から複数のオポチュニスティック投資家(資産価値の下がった物件を安く取得し、設備投資や運営改善等で資産価値を上げ、高く売却するモデルの投資家)の相談も舞い込んでいる。識者によると、今年後半からその動きは活発化するようだ。
 
 星野氏はこれまで磨いてきた運営力と長期的な視点を持つパートナーによって、日本の魅力あるホテルや旅館の再生、維持に向け、独自のスタイルで挑戦をしていく。(岩本 大輝)
 

※星野リゾートと㈱リサ・パートナーズの「ホテル旅館ファンド(仮称)」のニュースは以下より。
http://www.hoteresonline.com/articles/8690
 

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