こうあるべき論は捨て去り、京都の旅館の若おかみがパンダに
修学旅行を軸に旅館運営をしてきた京都の「綿善旅館」。ところがコロナ感染により止まらない修学旅行客の予約キャンセル。4月は98%ダウン、6月まで客ナシという現状です。そこで立ち上がったのが半泣きしていたという若おかみ・小野雅世さん。根底にある“人に喜んでもらえること”への思いがフツフツとわきだし、なんとパンダに変身したのです。
最初は、旅館の弁当行商にために購入したパンダの着ぐるみ。自腹で買ったから何につかってもええやん! と。そこで同様に経営厳しく半泣きしていた馴染みのカフェにパンダ姿で参上。ついでにアポなしでこれまた馴染みのラーメン屋さんに出没。そのときパンダがお店のスタッフのパワーになっていることを着ぐるみ肌で実感。インスタを通してオファーがくるまでなったそうです。
“毎日自宅で見るネガティブなことを、パンダの一瞬で忘れてもらえて私自身も幸せでした”という。自身の旅館経営も厳しい局面にある中でパンダになって喜ばせること。これはなかなかできないことです。しかも良くも悪くも世間の目が厳しい京都、そして格あるべき旅館の若おかみがパンダになるとは! おそらく前代未聞かもしれません。
しかしそこにはこれまで受けてきた“女将とはこうあるべき論”“京の女はこうあるべき論”に打ちひしがれそうになれながらも、信念である“人に喜ばれること”を第一にやり続けてきたこと、誰かに言われるからやりたいことを諦めることはアホらしいという、変化する時代に不可欠な割り切り精神があったからこそ、実現できたことなのです。
ホテル業界も確実に変わります。過去に縛られることなく、皆さんの根底にもある“お客さまに喜んでほしい”という気持ちを今こそ、何振りかまわずぶち上げて下さい。きっとそのとき、人々の笑顔にサービス業の醍醐味と存在意義を改めて確信することと思います。
そうそう、女将パンダのオファーされる方、パンダに生ビール1杯だけご用意くださいね。(連載9 山下裕乃)
施設詳細は↓
https://www.watazen.com/
京の宿 綿善旅館(施設外観)