価格競争に巻き込まれない商品を醸成する
---総支配人になってから改善した点はありますか。
当ホテルは1992 年の開業時はお台場もなくウォーターフロントの先駆け的存在でADRも2 万円を保っていました。その後、ウォーターフロントのホテルが多数開業して価格競争に巻き込まれ、さらにリーマンショックの発生当時はADR が1 万2000円程度まで下がってしまいました。私は2015 年に総支配人室長に着任したのですが、ADRも徐々に回復し1 万8000円前後で推移しています。これは地域の特性や立地条件の打ち出しと合わせての結果だと思います。
私が総支配人に就任した2018 年4月以降は、さらに本来ホテルが持つポテンシャルをきちんと生かしていこうと取り組みました。眺望を誇るスイートの増室やファミリー向け客室をつくったのもその一環です。そのほか、2018 年からは接遇アップのためにお客さまともタッチポイントを増やすようロビーにスタッフを配してインフォメーション業務などを行なうフロアサービスも再開いたしました。
総支配人はコストと売り上げを両輪で考えなければなりません。このホテルはリーマンショック以降、東日本大震災もあり、非常に厳しい営業状況が続き、本来、費用をかけなくてならないところを抑制していました。そこで総支配人としてコストをかけるべきところにはきちんとかけるよう指導し、経費のコントロールを中心にバックの部分を改善しました。
---総支配人に求められることとは。
一般的な総支配人像は、リーダーシップを発揮してスタッフをグイグイ引っ張っていくというイメージだと思います。私はそういうタイプではありませんし、当社はこれまで女性総支配人もいなかったのでロールモデルもありません。独自のスタイルを考えなければなりませんでした。そうした中で、私には目標やゴールやビジョンをスタッフと共有し、それに向かって意見を出し合い、ときにはアドバイスをするなど、調整しながら進めていく地ならし的な役割が合っていると感じています。とは言っても、もちろん判断しなければならないこともあります。失敗を含めて経験を重ねることで順応できる力を付けていきたいと思っています。
---阪急阪神ホテルズ初の女性総支配人とのことですが、働く環境を変えていくことは考えていますか。
私が総支配人に着任した年ぐらいから働き方改革が言われるようになりました。休日に関しては、年度の初めに希望をとり、私はそれをチェックして必ず休ませるようにしています。申請した月に休みが取れていなければその理由を聞き出して、次の月に取得してもらうなど。
当ホテルは正社員、パート・アルバイトを含めて約120 人で運営していますが、特徴はセクショナリズムがないことです。それはセクションを越えたシフト支援など機動力にもつながっています。若手が中心にBBQ やボウリング大会、小旅行を企画するなどスタッフの仲がよいこともよい影響をおよぼしているので、こうした企業文化を大切にしていきたいと思っています。
---今後目指していることを教えてください。
宿泊は稼働率が90%を超えているのでADR アップを目指していきます。宿泊の売り上げを伸ばすことが収益の要になると思いますし、ここが固められると安定した運営ができますから。また、宿泊と料飲のサービスレベルやグレードがチグハグではいけないので宿泊の単価アップを旗印に各部門のレベルを引き上げていきたいと考えています。
当ホテルは、都心からも近く、東京湾からの海風を受け、自然のゆらぎを感じるリゾートのような立地が特徴です。お客さまからもここに来るとリラックスできる、ホッとできるなどのお声もいただいております。そのように感じてもらえる部分をもっと訴求していこうと考えています。