猛威を振るう新型コロナウィルスの影響はどこまでにおよぶかまだ見えない。それに対する取り組みが、各社の未来を変えることになるだろう。
昨年末に中国・武漢を起点として拡大している新型コロナウィルス。2020 年を迎え中国からの旅行者は減少し、さらにそれでもやってくる中国旅行者からの感染を恐れた国内外旅行者の減少などを受け、旅行業界は大きな打撃を受けている。そして、それは現在だけではなく、今後の国際会議や展示会、イベントのキャンセルまたは延期など、その影響は計り知れない。そのため、経済産業省が国内企業の資金繰りへの懸念から、政府系金融機関に資金融資に対する配慮要請を行なうなど、これまでにない事態となっている。
これは、2002 年の年末から翌年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)を思い起こさせる。SARSも旅行市場に大きな影響を与えた。
当時、ある香港の老舗ホテルは稼働率が1割を切り、給与の全額支払いができない中でスタッフを交代で休ませながら料飲部門を中心に、ローカルビジネスをどう取り込むかというためにさまざまな取り組みをしていた。
それ同様に、日本でも今回の件では足下では多くのホテルにおいて宿泊部門に影響が出ているだろう。まず重要なのは、ゲスト、スタッフケアの体制の確立だ。感染を拡大させない取り組みは明確化されているだろうか。
そして、キャンセルへの対応も重要だ。各社対応が異なるようだが、事情を踏まえず杓子定規の対応が果たして良いのか。目先の数字はそれで多少カバーができるかもしれないが、中長期的な視点ではどうか。あるグローバルチェーンは国籍・理由問わずコロナウィルス関連の予約に関しては一切キャンセルチャージをとらないと決めたようだ。足下では苦しいが、対応の差でゲスト、旅行代理店などパートナー企業との関係性は変わってくる。
また、ゲストが来てくれないと指をくわえて見ているだけではいけない。料飲部門なら顧客に特別なプロモーションを実施するなども必要だろう。厳しい時期だから在庫整理と称してワインなどの大幅なディスカウントをするなど、緊急事態の今だからこそ、これまでの常識にない取り組みも必要かもしれない。
今、多く生まれている宿泊主体型ホテルにとっては非常に厳しい時期だ。その中で、それでも部屋を埋めたいと信じられないほどのディスカウントレートで販売をするホテルと、こういう時期だからと皆で休む、掃除などメンテナンスに充てるホテルなど、対応が分かれている。できれば身を削るのではなく、未来を見据えたアクションがあって欲しいものだ。この時期だからこそ近隣の企業にアプローチをしてみるとか、新たなコラボレーションが生まれるかもしれない。
緊急事態でホテルは通常通りではないPlanB の取り組みが求められている。そこで、近視眼的な取り組みだけに終わるホテルと、そうでないホテルでは、1 年後、さらにその先で大きな差が生まれているだろう。