深夜、寝床につくと少し開けた窓の外からシャーという車の走り去る音や道歩く人たちの笑い声などが甲高く聞こえてきます。早朝、ベランダに立つと街路樹を住みかとしているのでしょう、鳥たちの声がアチコチから聞こえてきます。お天気の良い日は実に楽しそうに会話をしているような鳥たちのサウンドです。その声を聞くと私自身の体にも爽やかな風が送り込まれてくるような気持ちになります。
ところが日中も深夜より増して車は走り、おそらく鳥たちも会話をしているのでしょうが、聞こえてきません。何となく余韻を感じさせる走り去る車の音は騒音と化し、鳥たちの声は騒音の中にまぎれてしまいます。夏になると鳥たちの声は騒音とともにセミたちの大きな合唱に呑み込まれてしまいます。もちろん、セミたちは子孫繁栄のために一生懸命、短い生命を生きているわけですからセミの声を騒音としてとらえることはいけませんが、爽やかさを運んでくれる鳥たちのさえずりの声が薄れてしまうことは残念なことです。
“風の人”山下裕乃の「THE SHARE」
第79回 騒音の中でも必死に発している声 ~真実をきちんと見極める目、耳を持ってほしい~
【月刊HOTERES 2019年07月号】
2019年07月05日(金)