ホスピタリティには、情動的な側面だけでなく、知的・理論的な側面も求められます。
その代表的な資質が知性であり、知性がなければそのほかの資質が適切に機能しないこともあります。
株式会社エスプレシーボ・コム
代表取締役
安東徳子氏
〈プロフィール〉ウエディング業界、専門学校を中心としたコンサルテーション業を長年に渡り幅広く展開。コンサルテーションによる課題発見と解決手法を示すだけでなく、研修も並行して行うサービススタイルが確実な結果を生むことから評判を呼び、コンサルテーション業務自体のリピート率の高さも注目されている。サービス業に特化した研修で現在までに1万人以上の受講実績を持つ。そこから導き出された独自のホスピタリティ理論は業界内外で高い評価を得ている。近年では千葉県の美容系専門学校の立ち上げコンサルテーションを担当し、創立翌年から9年連続県下1位の入学者数を維持するという驚異的な結果も出した。これらの実績は『共感力』をベースとした独自理論『ECメソッド』から生まれている。
知性がなければ意図せずして
失礼なことをする
〈知性に欠けるトーク例〉
シチュエーション:婚礼の打ち合わせで来館したカップル。プランナーが出迎え、アイスブレイクの会話を始めようとしたとき、新郎がコートを脱いだ。中には鮮やかな緑色のセーターをお召しになっていて、目を惹く。
プランナー「すごい色のニットですね! 緑色がお好きなのですか?」
新郎(不機嫌そうに)「これ、インポートなんだよね」
〈分析〉
お客さまに同調したいという純粋な思いがありますが、知識に欠けているために、相手を不快にしています。
この事例では、ニットの染色に対する知識が欠けているために、褒めるべきポイントを理解できていません。知識がなければ良い仮説も立てられないので、人目をひく色や色の好悪など、表面的な話しかできず、結果的に失礼な発言になっています。
〈対策〉
相手が気分を害しないためには、想定の幅を広げた上で、その中で相手が一番うれしいと思うような仮説を選ぶことが必要です。そして、断定して述べるのではなく、あくまでも「自分は知らない」という立場から、サンプルクエスチョンをすると、お客さまは不快には思わず、自分の知識も増えます。サンプルクエスチョンとは、回答例を想定して、具示した上で質問するテクニックです。