ジン市場はこの5年で2倍。ワインもこれから10 年で2倍以上に
クラフトジンやスピリッツが世界的に伸長する中、近代ジンの母国と言える英国では、さらなるジン市場と拡大と日本市場に向けたワイン、とりわけスパークリングワインの浸透に精力的だ。
英国のWine and Spirit Trade Associationからマイルズ・ビル代表とサイモン・スタナード氏が来日し、駐日英国大使館でワインとジンに関するセミナーが11月28 日に開催された。
英国におけるワインとジンの歴史は古く、11 世紀のヘンリー2 世の時代からワインを輸入。14 世紀初頭には、ボルドーから9000 万ℓを輸入していた。1698 年には、英国最古のワイン&スピリッツ商であるベリー・ブラザーズ& ラッドが設立。1952 年には英国で初めての本格的なブドウ栽培が始まり、今日では500 以上のブドウ畑と150 を超えるワイナリーから800 万本ほどが生産されている。このうち7 割以上がスパークリングワインであり、2030 年までには2000 ~ 3000 万本まで生産量を伸ばしていく。国際的な評価も高く輸出も着実に伸ばしており、17 年の対日輸出は1000ケースほど。この日に行なわれた試飲会では4 社のスパークリングワインが出展した。
16 世紀にオランダで生産が始まったジュネヴァ(Gen)は、英国で手に入るようになると戦士の気付け薬としても重宝された。後の世代ではジンの飲みすぎが社会全体の生産性の低下を招き、社会悪とされた時代を経たが、1850 年になるとジントニックが生まれ、19 世紀後半から続くカクテル文化のベーススピリッツとして欠かせない存在となる。
2008 年には、シップスミスが1820 年に以降初めてとなる蒸留免許を取得。以降10 年で新たに30の蒸留所が誕生している。現在、英国では315 の蒸留所があり、これは5 年前からの2 倍。最小生産量などの規制緩和や蒸留器をはじめとした少量生産が可能な機器の入手の容易性、もとより需要の高まりにより、需給ともに成長したと見られている。
2018 年には、記録的な成果が見られた。英国では直近の12 カ月で600万本、16 億ポンドに相当するジンを消費。輸出も20 億ポンドに及んだ。これは、食品・飲料における7 番目のマーケットであり、英国の輸出商品トップ10ではスコッチウイスキーを先頭に四つの酒類カテゴリーが存在している。
ワイン輸入国として世界で2 番目、スピリッツ輸出国としては世界一である英国の、酒類への注力は長年の変わらない指針とも見られる。この5 年で2倍以上の成長を見せる英国産ジン市場は「ジンネッサンス」(Ginaissance)と呼ばれ、スコッチウイスキーと並ぶ輸出商品への育成が期待されている。